「どこでどんな災害や事故が発生したのかをいち早く知りたい!」。これはテレビや新聞などの報道機関に限らず、社会インフラ企業や自治体など多くの企業でも強いニーズがある。それに応えるサービスが、AIによる情報解析を手掛けるSpecteeが開発した「スペクティ」である。
いま、人々が災害や事故の発生を最初に知る手段が、テレビからネット情報(ソーシャルメディア)に移り始めている。Twitterなどのソーシャルメディアは、災害や事故が発生した直後に情報を発信する重要なメディアになっている。ただ、あふれかえる情報を常にウォッチし、その中から有用な情報を抜き出す作業は人手では困難だ。
スペクティはTwitter、Instagram、Facebookなどのソーシャルメディアを流れる情報から自然災害や事故に関するものを検出して内容を解析し、情報の真偽を判定したうえで利用企業に配信する機能を持つ。「社会活動を停止・停滞させるようなネガティブなインパクトのある事象を幅広く“危機”と位置づけ」(村上建治郎代表取締役CEO)、国内外で発生しているさまざまな危機を可視化する危機管理支援サービスだ。
2016年4月に発生した熊本地震のときのNHKが、スペクティの最初の大きな利用事例で、その後、採用の動きが企業間に急速に広がった。テレビ局や新聞社をはじめとする報道機関だけでなく、電力・ガスや運輸といった社会インフラを支える企業や、全国各地の自治体など国内350社以上が現在スペクティを使っているという。
投稿を解析して「危機」の種類と発生場所を判定
スペクティは「情報の収集」、「解析および内容分類」、「タイトル付け」、「真偽判定」という4つのステップを踏んで情報を配信する。利用企業は、情報を収集する地域(都道府県や市区町村など)、危機のカテゴリー(災害や事故など)をあらかじめ指定しておく。スペクティは、その指定に該当する投稿を、ソーシャルメディアが提供しているAPIを使って収集する。
続いて、収集した投稿に含まれるテキスト、画像、動画を解析し、分類する。例えば、消防車が映っていて、建物から黒い煙が上がっていて、部屋からオレンジ色の炎が出ている、という動画が上がっていれば、「火災」に分類する。そのほか、横転した自動車の画像なら「交通事故」、水をかぶった道路の画像なら「道路冠水」のように分類する。
スペクティは、災害や事故の発生場所の推定も行う。「投稿から場所がわからないことが多いので、さまざまな情報を組み合わせて推定している」と村上CEOは話す。例えば、画像や動画に道路標識や看板が映り込んでいれば、そこから地名の情報を抽出し、地名データベースと照合して場所を特定する。