日本気象協会は2019年7月、全都道府県の市区町村単位で商品需要を予測する小売業向けサービス「売りドキ!予報」の提供を開始した。最大の特徴は、Twitterのつぶやき(ツイート)を解析して得られる「体感指数」を利用することだ。
まず、位置情報が付随したつぶやきに対して自然言語解析を行い、「暑い」や「寒い」など寒暖の感じ方に関する表現が含まれているものを抽出する。そのうえで、つぶやきが投稿された地域の最高気温や最低気温、前日との気温差、日射量との関係をAIで解析して、「猛烈に寒い」から「寒い」「快適」「汗ばむ」「猛烈に暑い」まで9段階の「体感指数」を導き出す。
さらに体感指数のほか、気象予報の最高/最低気温、平年の気温との差などと併せて、「総菜」「青果」「精肉」など7分類・最大550以上のカテゴリーに細分化した商品の1週間先までの需要を見通す。
体感指数を考慮することで、単純に気温だけに着目するより正確に需要を予測できるという。最高気温が同じ30度だとしても、前日並みの日と、前日比で5度高い日とでは、暑さの感じ方が変わってくるからだ。例えば、アイスクリームや冷たい飲み物は気温が高い日に需要が増える傾向があるが、同じ気温でも前日との気温差が大きいときの方がより暑く感じやすく、売り上げが一段と伸びる傾向がある。
需要予測に基づくプロモーションの有無が売り上げを左右
「体感温度によって消費者が食べたいものは変化する。体感指数を使いこなすかどうかで商品の売り上げに大きな差が出てくる」。事業本部防災ソリューション事業部先進事業課サービスプランナーの齋藤佳奈子氏はこう話す(写真)。実際、日本気象協会がサービス開始に先立って埼玉県内の総合スーパーで実証実験を行ったところ、「売りドキ!予報」が示した体感指数と需要予測を基に店内プロモーションを実施した店舗の売り上げが、他店を上回った。
対象商品はカブ、チンゲン菜、アスパラで、いずれも温暖な日に売れやすい傾向がある。そのため実証実験期間中、暖かいと感じられる日には売り上げが伸びるはずだ。プロモーションをした店舗は38%増を記録したカブを筆頭に、3種類の野菜の売り上げが、その店舗の曜日別平均を上回った。一方プロモーションをしなかった店舗では、カブは平均を10%上回ったものの、チンゲン菜とアスパラはそれぞれ平均を14%と30%下回った。とくにアスパラは、プロモーション実施の有無で60ポイント以上の開きが生じた。