リーダー人材は希少。その獲得のためにも今すぐダイバーシティの充実を

 一方で、リーダーとなる人材を次々に育成していく組織にもならなければいけません。私は、自分をリードできる人こそがリーダーにふさわしい資質の持ち主だと思っています。

 他者に依存することなく「自分をリードする」ためには、強い思いとブレない軸を持ち合わせていなければなりませんから、非常に希少な存在です。

 そういう人材が自分を駆り立ててくれる課題を発見し、使命感・責任感を果たしていける環境を得たなら、確実に成長をしていくばかりでなく、周囲を巻き込み、組織をリードする行動を自発的に開始し、結果を導く存在になれると私は信じています。

 企業組織にとって大切なのは、この希少な人材を獲得し、なおかつ1万時間が必要と言われるリーダー育成のための環境を整えていくこと。希少な存在を発見しようというのに、いつまでもダイバーシティが定着しないようでは、魅力ある人材はどんどん海外企業に奪われていくでしょう。

 同時に組織側も円滑に動くようになるための働きかけを意図的に続けていく必要があります。近年、日本でも心理的安全性(サイコロジカル・セーフティー)の大切さが話題に上るようになりましたが、この心理的安全性を起点とする発想でGoogleが考え、体現してきた生産性向上計画である「プロジェクト・アリストテレス」は、大いに参考になると思います。

 こうして、パンデミックによる影響をきっかけに日本型の組織や個人の働き方にある本質的な問題点と、その解決への道筋発見が改めて問われている中、私はもう1つ「本質」が明らかになったと思います。

 それはストーリーを語ることの重要性です。そもそもロジック、すなわち論理というものは自分のためのものです。物事をきちんと咀嚼し、理解し、整理する上で必須の要素ではありますが、そのロジックだけでは人は動かないこともまたコロナショックでの体験から多くの人が学んだはずです。

 組織が不自由や不安に襲われた時、何よりも人や組織を動かしたのはロジックでもAIでもなく、心に響くストーリーに基づいたコミュニケーションだったのではないでしょうか。

 そう、人間は論理ではなく共感で動く生き物なのです。コロナがもたらした新しいリーダーシップ像の本質の1つがこの「ストーリーをもって語り、人と組織を動かす」ことだったのではないかと思うのです。正解がない時代のコミュニケーションにおいて、情熱を持ってストーリーを語れる存在が組織を動かしていくべきなのです。

「よく生きる」時代の働き方とは何なのか? 今こそ本質に目覚めるべき時

 新型コロナウイルスは私たちに生命の危機を感じさせましたが、その経験を通じて多くの人は「よく生きる=Well-Living」ことに目覚めました。そこで必要なのが、「よく働き」「良い生活をする」ことだと知りました。同時に、組織には本物のリーダーシップが必要だということも知ったはずです。

 その上で、いま一度これまでの日本、これまでの私たちを強烈に反省するきっかけもあったはず。「私たちは遅い」「私たちは古い」と今度こそは反省して、動き出さなければいけません。見え始めている「本質」というものに向かって。

 前代未聞の体験の中でテレワークの日々を過ごし、こうも気付いたはずです。組織も個人も「役立たず」が炙り出される時代がやってきている、それがポスト・コロナだと。

 個人も組織も目覚めなければいけません。会社が、リーダーが、個が、本質を求めて動き出すこと。それが真の働き方改革への第一歩なのです。