基本要素が「Eliminate:排除」できれば、基本要素の実現に必要な補助要素は自動的に排除されます。元々、必要な仕事や必要な要素だけを抽出してきたのですから、そう簡単に「Eliminate:排除」できるものではありません。最も正しい方法であると考えて設定した作業の基本要素です。それをあえて止められないのかと問い掛けるのですから、容易ではありません。例えば、穴を明けるという基本要素を「Eliminate:排除」できないかと考える際は、「穴を明けずに製品ができないか」と考えるわけです。当然、設計上の必要性から穴を明けているはずですから、設計そのものを見直すことになります。この時点で「Eliminate:排除」できる基本要素は少ないかもしれません。しかし、「Combine:結合」以下の3原則の適用はかなり可能性があります。例えば、2カ所ある溶接カ所を1カ所にできないかと考える。できる可能性があれば、設計上の強度計算などをして確認する必要がありますが、大きな成果が期待できますね。

 改善を進める上で重要なことは、改善対象の基本要素を一つひとつ一定の目標時間を作って、淡々と確実に進めていくことです。全体を見わたして重点を決める必要はありません(既に重点だけを検討する段階に来ています)。全体を見わたす改善は最後の確認作業として行う程度で良いと思います。

コンパクト化と高付加価値化

 次に、いよいよ“相当コンパクトで高効率の生産スタイル”を考えてみましょう。

 改善を加えた基本要素を使い、新たに生産スタイルを組み立てていきます。理論的には基本要素さえ実行できれば、自社の製品を作り出すことができるはずです。

 補助要素は基本要素を実行するために必要な要素でした。つまり、補助要素はあくまで基本要素のためにあるので、基本要素さえ新しい生産スタイルの中に組み込まれていれば良いことになります。従って、補助要素はなるべく少ない方が高付加価値化に寄与することになります。

 そこで、基本要素だけを順番に実行できるような生産スタイルを設計したほうが高付加価値化に一歩近づきます。「順次生産方式」と仮に名付けましょう。順番に実行できるのであれば、連続でも生産できないだろうかと考えます。すなわち、補助要素を入れずに基本要素だけを繋ぎ合わせた生産スタイルも考えられるのではないでしょうか。これを「連続生産方式」と呼ぶことにします。さらにいっそのこと、基本要素を並行で実行できれば、非常に早く製品を生み出すことができそうです。ただし、リソース配分が少し必要になります。リソースの配分という少々複雑な課題はありますが、「平行生産方式」と呼ぶことにします。

 まだ、ありますね。「同時生産方式」ができそうです。つまり、平行で生産できるのであれば、同じところで一度に基本要素を実行できれば同時に生産できるわけです。ただし、「同時に行う」技術が確立しなければできません。少々ハードルが上がりますが、検討の余地はあります。投資しなければならないコストも上がりますね。同時と言っても異なる基本要素があるわけですから、正確にはネックとなる基本要素の時間がかかります。そこで、最も短い時間で達成できる「同時生産方式」が実現可能であれば、恐らく究極の生産方式となるでしょう。この生産方式を私たちは「瞬間加工生産方式」と呼んでいます。