どの程度の細かさで可視化・リスト化すれば良いかは迷うところです。分析の対象の広さ、および改善できる可能性と、費やすことができる工数と仕上げなければならない期日によって、分析の細かさは変わります。その細かさに合わせて可視化・リスト化の細かさが変わってきます。一概には言えない部分ですが、仮に何の制約も無ければなるべく細かい方が良いでしょう。一般的によく言われる要素作業リストの細かさが適当だと思いますが、分析対象が設備の場合はもう一つ細かい単位の動作レベルが必要なこともあります。高付加価値化の新たなモデルを作るための分析と考えると、広く行う分析ではなく、深く行う分析が理想的です。従って、類似した作業や業務は、モデルを選んで分析するのが良いでしょう。

 可視化・リスト化することで、具体的に議論したり検討したりすることができるようになります。こうした可視化・リスト化は、皆さんも経験したことがあると思いますが、とても大変な仕事です。問題は「何に使うのか」ということですね。目的が曖昧だと仕事は決して進みません。

真の付加価値を見極める

 可視化・リスト化するのは「必要な作業や仕事」だけで十分と述べましたが、必要な仕事とは、その企業が顧客や社会に提供している製品やサービスを生み出すことに直結している仕事です。それ以外の仕事が不必要な仕事であると言っているのではありません。ここでは、今後の経済環境に適応した新しい生産スタイルの構築を考えるにあたり検討しなければならない仕事として「必要な仕事」を意味します。この後はしばらく「必要な仕事」だけにフォーカスし、その他の仕事はいったん忘れてかまいません。

 次に「必要な仕事」について、可視化・リスト化した一つひとつの要素をさらに吟味し、「基本要素」と「補助要素」に区分します。この見極めが最も重要であろうと思います。

 基本要素とは、直接的に付加価値を生み出している作業や業務のことです。例えば、加工作業の中の切削刃が素材を削っている瞬間や、検査の為に製品に電流を流している瞬間のような作業や業務です。それに対し、補助要素とは、基本要素を実現するために必要な作業や業務のことで、切削作業の為に治具に製品をセットする作業や、検査の為に電極を製品にセットする作業などです。全てのリストは、この2つの要素からなっていると考えて区分します。つまり、基本要素がどこにあるかを見極めて発見することだと言っても過言ではないでしょう。その要素はお金を生み出す仕事か、リスクを低減する仕事か、信頼を生み出す仕事かと問いかけて、そうだと言える要素だけを見つけ出すのです。半製品を工場内で運搬するとお金になるでしょうか? 必要な仕事なのだからやっているのでしょうが、お金にはならないですね。

 ただし、誤解しないでください。基本要素以外の要素を不必要な仕事であると言っているわけではありません。その要素を外したら製品ができなくなる、という要素が基本要素です。私の経験では可視化・リスト化した要素の中で基本要素は30%ほどしかないことが多いようです。ここで、さらに、基本要素だけにフォーカスして補助要素はいったん忘れて検討を進めます。この時点で検討するべき仕事や業務は相当絞られて少ない量になっていることでしょう。

(第3回に続きます)

◎宗 裕二
日本能率協会コンサルティング 品質経営研究所所長/プリンシパル・コンサルタント
モノづくり企業の支援を中心に、現場力の重要性を強く意識し、専門領域である「品質」を中心視座として、日々活動している。
モノづくり企業に求められる品質構築機能は、「最大の価値と、最小のリスクを、最短の時間で創出できる変換機能を構築する」ことであり、「結果としてミニマムコストのモノづくりが可能となり、最高の利益を獲得出来る」ことになると考え、「品質経営」として提唱している。その為に、「従業員の一人一人が、無意識のうちに、顧客価値を予見した行動を取れる文化を築く」ことが重要課題と位置づけ、その推進に力を入れている。JMACサイトでもコラムを執筆。