直売所コーナーとの補完・共存を目指す

 しかし、地元生産者との商売ですが、うまくいっている話ばかりではありません。「農産物直売所コーナー」ですが先にもお伝えしたように、お客様の来店動機になっていますがこのコーナーの売上はA社の青果部門の利益にはほとんど寄与しません。それどころか、農産物が豊作の時期など特に「農産物直売所コーナーの売れ行きは好調だが、青果部門の売れ行きは不調」ということが普通に起こります。農産物直売所コーナーでは売価を各生産者が自由に設定するので、消費者にとってはとても魅力的な価格ですし、最近では生産者自身でシールをつくってPRしたり、袋の詰め方や商材の向きも工夫したりとパッケージも随分魅力的になっています。

 生産者が成長してもスーパーが成長しなければ当然こういうことになるわけです。とはいえ、今さら後戻りはできませんし、スーパーを、そして地域も活性化させていくためには、前進しなければならない重要なテーマなのです。

 少なくとも直売所コーナーでも自社売場でも同じ商品がたくさん積まれることは避けるべく、一昨年の生産者のアイテム別の売上実績をもとに仕入れの量とタイミングを調整しようと試みましたが、やはり年ごとに大きくずれるため、あくまでも過去データは参考にしかなりませんでした。

 そこで、各地区の〇〇会といった生産者グループに趣旨を説明し、生産者出荷予定を出してもらえるよう協力いただきました。生産者グループの方々に新たな作業をお願いすることになったわけですが、1カ月ごとに更新される直近データをもとに各店が仕入れ量の調整し、生産者とかぶらない商品の品揃えができるようになりました。

 また、仕入れ計画だけでなく仕入れた後の売場づくりにおいても、直売所コーナーの午前中の売れる時間帯が落ち着く頃を見計らって自社売場での展開を拡げていったり、自社売場で好調に売れていた商品が減速し始めたら、直売所コーナーでの同商品の出荷状況を確認して自社売場の商品の尺数を早めに減らす等、売り場での売れ筋の変化を見逃さず早期対応するようにしていきました。

 ここまでには様々な試行錯誤がありました。仕入れ計画情報を有効に活用している店舗、仕入れ後の売場づくりを実践している店舗、いずれもやれていない店舗と課題はまだまだありますが、直売所コーナーとのバッティングではなく補完・共存の姿に着実に近づいています。

地域に支えられているから地域へ恩返し

 部門でのナレッジの共有、組織内連携、そして外部パートナーである生産者や地場メーカーとの連携、こういった活動がうまく回り始めると、お客様の反応も少しずつ変わり始め、お客様に対してはもちろん地域に対する関心が自然と湧いてきます。