韓国ではすべての国内線空港が搭乗者確認に
手のひら静脈認証を採用

 2018年、韓国空港公社は同社がマネジメントする国内線空港での搭乗者確認プロセスに、手のひら静脈認証を採用することを決定。1年足らずの内に14あるすべての国内線空港でこの新サービスの稼働が始まった。

 日本では実施されていないプロセスゆえにピンと来ないかもしれないが、世界の多くの国では国内線利用者に対する本人認証が義務づけられている。独自の安全保障上の事情を抱える韓国もその1つ。

 従来、国内線に搭乗する際は空港でのチェックインを済ませると、手荷物検査場のスペースで国民IDカードと呼ばれる身分証明書を提示し、常駐する保安担当者の目視によるチェックを受けなければいけなかった。

 当然のことながら利用者にとっては煩雑な行程であり、時間もかかる。チェックする側の韓国空港公社としても手間とコストとリスクの伴う行程だった。

 日本の空港も昨今では混雑の緩和が課題となっているが、それは韓国でも同じこと。年間約3200万人が利用する国内線搭乗者の動きをスムーズにすることは、空港経営全体の大きな課題となっていたため、渋滞を生み出す搭乗者確認プロセスの効率化施策として手のひら静脈認証が採用されることとなった。

 効果は歴然。空港内での人の動きがスムーズになり、保安担当者の確保という人員面での問題も解消。さらには国民IDカード不携帯時に搭乗ができなかったなどの問題 からも解放されたことなどから、早期の全空港完備が実現した。

 付随して、早くも別の波及効果が現れている点はIT活用やDXが進む韓国ならでは。空港内には搭乗手続き以外にも、さまざまなサービスを提供する店舗や銀行、その他施設が入っていることから、韓国空港公社による手のひら静脈認証と連携した新しいサービスが生まれ始めているという。

 あくまでも厳正な本人認証と、セキュアなデータ活用を達成することを第一義として導入された認証技術ではあるが、そこに利便性という価値も加わったことにより、DX次代に相応しい可能性の広がりがもたらされている、といえる。この点は、空港関係者や航空産業とは無関係な産業にも、大いに参考にできる部分があるはずだ。

「国にも産業や企業にも、それぞれの事情や課題があります。ですから、どこが進んでいて、どこが遅れているという視点では一概に語るべきではないと考えていますが、こうして銀行や年金機構、空港というように非常に公共性が高く、数多くの方が利用される場面で手のひら静脈認証が採用されているのは事実ですし、ありがたいことに富士通には海外から多数のご相談やオファーも頂戴しています。

 今後もセキュリティの向上はもちろんのこと、省スペースや非接触、認証時間のさらなる短縮など利便性につながる改良を進め、DXによる未来創造に私たちも貢献し、新たな可能性を導き出せる存在でありたいと考えています」

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