「CES 2019」におけるクアルコムの展示ブース

(朝岡 崇史:ディライトデザイン代表取締役)

 世界最大の民生技術の展示会CES(正式な読み方は「シーイーエス」)。来年度(2020年)も年明け早々、1月7~10日の4日間、米ネバダ州のラスベガスで開催されることが決まっている。

 2016年に主催団体の名称が「CEA」(Consumer Electronics Association)から「CTA」(Consumer Technology Association)に変わったことからも推察されるように、CESはすでに「家電の見本市」ではない。軍事技術以外は何でもありの、最先端デジタルテクノロジーが主役のビッグイベントであり、データ時代の趨勢を掴む意味では決して外すことのできない存在と言っても過言ではない。

 昨年度の来場者は世界中から約18万人、出展社は4500社を超える。これだけ大規模なイベントなので、会場はラスベガスコンベンションセンター(LVCC)があるTech Eastを中核に、Tech West(サンズホテル、ベネチアンホテルなど)、Tech South(アリアホテル、MGMホテル、MGMパークシアター)など、ラスベガス市内の主要なホテルのコンペンション施設、ボールルーム、シアターなどを貸し切って行われている。

 ちなみに再来年の2021年から、Tech Eastは道路を隔てて南側に建設中のLVCCの新ホールに移転し、積年の課題だった手狭感・混雑感が緩和されることが期待されている。

 筆者は毎年、コストをかけ、ラスベガスまで行ってCESに参加しているのだが、なぜ毎年わざわざ現地に出かけるのか? と質問されることがある。答えは簡単。自分にとってCESは定点観測をするための展望台なのだ。一見関連のなさそうな「点」と「点」とを「線」でつなげる眼力(洞察力)を養うためのトレーニング場なのである。

「コネクテッド」時代から「データ」時代へ移行する現在、最先端のデジタルテクノロジーは、単に企業の金儲けのためだけではなく、「社会課題をどう克服するか」というSDGsやESGの視点も十分考慮されて開発されるべき段階となっている。例えば、「安心安全なデジタル社会の実現」という社会課題と「住みやすいまちづくり」という社会課題同士の関連があるように、それぞれの課題に紐づくテクノロジーも、「ブロックチェーン」や「スマートシティ」も、連鎖していると考えるのが自然だろう。つまり、社会課題の単位で物事を考えることが習慣化されると、「木」(個別のテクノロジー)は「森」(まとまった社会課題解決のイノベーション)に見えてくるし、テック企業のふるまいに対しても善悪の判断がつきやすい。

 今回は、過去を遡ること数年間のCESで拾い集めた数々の「伏線」を手がかりにして、間近に迫った「CES 2020」の動向や見どころについてガイドしていこう。

米クアルコムが半導体独占、5Gを巡る勢力図に注目

 CES 2020の注目リストのナンバーワンは「5G」で決まりと言っても過言ではあるまい。あらゆるモノが高速・大容量・低遅延の5Gネットワークにつながることで解決できる社会課題は多い。接点(タッチポイント)としてまず重要なのは、個人が持つスマホ端末が3G・4Gから5Gへ刷新されることである。