AIの弱点克服!「再学習コスト」大幅削減の仕組み

環境が変化してもAIの精度を保てる新技術を富士通研究所が開発

栗原 雅/2019.11.29

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再学習なしでも判断精度が下がらなかった

 ではHigh Durability Learningそのものの信頼性はどうなのか。富士通研究所は金融業、小売業、運送業での利用を想定した複数のAIにHigh Durability Learningを適用して検証を行い、いずれも自動修復によってAIの判断精度を高い水準に保てることを確認した。

 一例が、金融機関が企業の信用リスク評価に使うAIに適用した検証である。3800社の財務データのサンプルを用いて学習させたAIは当初、91%の精度で信用リスクの高い企業と低い企業を見分けた。しかし、AIを運用していくうちに経済環境などが変化したため69%にまで精度が下がってしまった。リスクが高まった企業を低リスクと評価してしまう、あるいはその逆のケースが実に3割に達したわけだ(図)。

図 学習後、時間が経つにつれてAIの判断精度が低下した(富士通提供の資料を基に作成)
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 金融機関にとってリスク評価の見誤りは大きな損失につながる。「本当は信用リスクが低いのにAIが高リスクと判断すれば、融資の機会を失いかねない。反対に信用リスクが高まったことを見極められずに融資を実行すると、将来的に貸し倒れにつながる恐れがある」(富士通研究所人工知能研究所トラステッドAIプロジェクトの中澤克仁主任研究員)。

 一方、同じAIにHigh Durability Learningを適用したところ、1回も再学習を実施しなかったにも関わらず、89%という高い精度を維持して信用リスクを評価できた。

 富士通研究所は引き続き多様な業務用途を対象にしたAIで、High Durability Learningの検証を進める。そして2020年度中に、データとAIを活用したデジタル変革を支援する富士通のフレームワーク「Design the Trusted Future by Data × AI」にHigh Durability Learningを組み込む方針だ。