ANAの働き方改革、業務支援ツールをアジャイルに改善

アジャイル化と内製化が進むソフト開発

鶴岡 弘之/2019.10.21

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 アジャイル開発のメリットは「ソフトウエアを素早くリリースできる」こと、そして「ユーザーの反応を見ながらソフトを追加・改変できる」ことだ。ただし、ソフト開発を丸ごと外部の会社に発注していたら、そのメリットを生かせない。ソフトのスピーディーな追加・改変には、社内でプログラミングできる体制が必要になる。そこで、アジャイル化と同時にソフトの内製化に取り組む企業が増えているというわけだ。

空港業務の現場でユーザーの要望に応えたい

 ANAもそんな1社である。永留氏は「業務支援ツールのソフト開発は、必然的にアジャイルと内製の割合が増えていくでしょう」と語る。

 ANAは2017年より、全社を挙げて大規模なDX(デジタルトランスフォーメーション)に取り組んでいる。飛行機の搭乗者向けデジタルサービスプラットフォームの整備などと併せて、同社のDXの大きなテーマの1つとなっているのが、「業務の自動化・省力化による従業員の革新的な生産性の向上」。つまり「働き方改革」の実現である。

 イノベーション推進部ではその一環として、これまで人が行ってきた作業を自動化したり、簡単に使えるツールを提供し、働き方改革を推進していこうとしている。

「たとえば、社内のシステムに溜まったデータから各種レポートを作る際、現在は担当者が手動でCSVデータをダウンロードしています。RPAなどを活用することで自動化できる余地がまだまだ大量にあります。

 また、空港の業務では大量のスプレッドシートが使われていて、スマホやiPadでデータを共有しています。ところが空港で働く人のなかには、軍手をはめて作業をする人もいます。軍手をはめているとシートの入力にとても手間がかかります。だからプルダウンで入力項目を選べるようにするなど、もっと画面を使いやすくする改修も必要になってきます」

 そうした空港業務の自動化の要望や新機能のアイデアは、イノベーション推進部のメンバーが業務の現場に出向き、現場の従業員とコミュニケーションを図ることで吸い上げている。現場の話を聞き、「こういうところを自動化したい」「こういうことに困っている」「こんなことがやりたい」という声を集める。それらの声を記録し集約した上で新たな業務プロセスをデザインし、ソフト開発部隊に発注するのだ。

「今、ソフト開発はできるだけ短納期で行っています。けれども、できれば現場に赴いたメンバーがその場でちゃっちゃっと作ってユーザーに見せてあげられるようにしたい。『こんなイメージですかね』『いやいやそうじゃなくて』『じゃあこれは』『そうです、こんな感じです』というように、その場で画面のイメージや機能の使い勝手が分かれば、後になってまた打合せをしたり、余計な修正をすることもなくなります。

 僕自身は、細かい業務システムは65点ぐらいの出来でリリースしてしまっていいと思っています。使ってもらいながら直して、品質を上げていけばいい。ただし、そのためにはやはり自分たちで作って直せるスキルを持つことが必要です。そうでないとスピードが出ないし、ユーザー側の満足感を得られません」(永留氏)