国内ではChief Digital Officerの略であるCDOが大多数を占める中で、Chief “Data” Officerの肩書きを持つCDOの一人が、三菱UFJフィナンシャル・グループの安田裕司氏だ。金融機関における「データ管理者」の役割を、デジタル分野における経営陣コミュニティ「CDO Club Japan」の加茂純代表理事が聞いた。(JBpress)

――Chief Data OfficerとしてのCDOは、海外ではかなり多いのですが、国内ではまだわずかです。まず、安田さんの役割を教えていただけますか。

 ひと言でいえばデータガバナンス、データをきちんと収集する枠組みを作り、しかも正確性を確保し、データの利活用を促す環境を整備することがCDOの一番の役割です。

 弊社がCDOを設置したのは2014年ですが、そのきっかけの一つがリーマンショックです。

 リーマンショックのときには、緊急時に重要なデータを正確にすばやく収集する仕組みが大手の金融機関でさえ整備されていなかったことが明らかになりました。このことが世界的に非常に大きな混乱を巻き起こす要因になったという反省にたって、銀行の監督を行うバーゼル銀行監督委員会という組織が、リスクデータの集計と報告に関する諸原則を2013年に定めたのです。そして世界の主要な金融機関に対して遵守を義務づけました。それを受けてCDOを置いたところもあり、金融機関のCDOはChief Data Officerを指すことが多いのです。

――そもそも金融機関はデータが整備されているというイメージがあるのですが。

1カ所でも間違えると判断ミスにつながる

 もちろんそうですし、とくに日本の会社のデータはそれぞれの現場レベルの意識も含めて高いと思います。ただしデータの世界が難しいのは、最終的な報告書を作る際に、どこか1カ所でも間違えるとほかがすべて正しくても正確なものができないのです。データが不足していたり間違っていたりすると、正しい集計・分析結果が出ないために、経営や業務の判断のミスにつながります。

 また、弊社は海外の多数の国で業務展開を行っていますが、世界中のデータを即座に集めるのはなかなか容易なことではありません。また中には国外へのデータ持ち出しなど国ごとの規制もありますから、さらにデータの集約が難しくなる場合もあります。