先進企業が集まるオープンイノベーション拠点
オフィスに出会いの「場」としての機能を持たせた「オープンイノベーション拠点」。不動産業界ではビジネスモデルとしての注目度も高く、2019年4月24日に国土交通省が業界を発展させていくための指針として発表した「不動産業ビジョン2030」でも、オフィスに対する企業ニーズの変化に触れられており、不動産業が果たすべき役割や期待される将来像の一つとして「人々の交流の『場』を支える産業」というものが挙げられている。
その他の業界でも、主に自社の新規事業創出に繋げることを目的に、オープンイノベーション拠点の運営を試みる企業が増加している。具体的な事例を見ていこう。
●BASE Q
三井不動産が東京ミッドタウン日比谷の6階に設置したオープンイノベーション拠点。2018年5月15日より本格始動。
ベンチャー企業やNPO、官公庁や大企業のイントレプレナー等、多様な背景を持つ人々の協業を促し、新たな価値の創出や社会課題の解決を支援するための場として運営されている。イベントホールや誰でも利用できるカフェスペース、予約制のワークスペースに加えて、別途会員専用のコミュニティスペースなどを備えている。
また、大企業のイノベーション創出を支援することを目的に提供されている「BASE Qイノベーション・ビルディングプログラム」にも注目したい。2015年4月にベンチャー共創事業部を設置して以来、ベンチャー支援に力を入れてきたことの知見が活かされており、戦略整理から社外パートナーの探索、協業という一連のプロセスを専任のコンサルタントが一気通貫で支援するサービスや、最新のベンチャー企業の動向、新規事業の進め方といった、オープンイノベーションの実践に不可欠な知識を学べる教育カリキュラムを提供している。
●SENQ
日本土地建物が運営するコワーキング・シェアオフィス型のオープンイノベーション拠点。
2016年11月の「京橋」オープン以来、「青山」「霞が関」と拠点を拡大しており、2019年5月には「六本木」拠点をオープンさせている。各拠点には地域性に応じたテーマが設定され、それぞれテーマに基づいたイベントを実施しているほか、拠点内や拠点間における会員同士の交流やマッチングも支援。加えて、メンターやアライアンスパートナーが事業成長や課題解決をサポートする仕組みを提供している。
それぞれの施設テーマは、京橋が「FOOD INNOVATION」、青山が「CREATOR'S VILLAGE」、霞が関が「LEAD JAPAN」、六本木が「CHANGE THE THEORY」となっている。
●シティラボ東京
2018年12月6日に東京建物が東京スクエアガーデン6階にオープンした、持続可能な都市・社会づくりを行うためのオープンイノベーション拠点。
コワーキングスペース等の提供のほか、SDGsやESG投資、テクノロジーなどをテーマとした各種イベントの開催に加え、サステイナビリティを軸としたスタートアップコミュニティの立上げや、社会起業家育成プログラムの提供などの実施を予定している。
●LODGE
2016年11月1日、ヤフーが千代田区の自社オフィス内に開設したことで話題を呼んだオープンコラボレーションスペース。
ヤフー社員と利用者の接点の場として協業の機会を生むだけでなく、利用者同士を結び付けて、情報交換や新たな協業機会の創出をサポートする取り組みも行われており、2017年には「DMM.Africa」と「タイガーモブ」のコラボレーションを生む等の実績に繋がっている。
1330平方メートルにも及ぶ広大なコワーキングスペースであるため、イベントも数多く実施されているが、コンセプトにそぐわないイベントや貸切のイベントは行われていない。同様の理由で、個室の貸出も行なっていない。
●hoops link tokyo
2017年9月1日、スタートアップや大企業、自治体、大学等様々な立場の人々が集い、社会的な価値を創出する場として、ITベンチャーが集中する渋谷に三井住友フィナンシャルグループが開設した、会員制のオープンイノベーション拠点。
同グループが運営するアイディエーションプログラム「SMBC Brewery」の拠点でもあり、2019年3月25日にはこの共創プログラムの成果として、SMBC日興証券とHEROZが共同で開発した「AI株式ポートフォリオ診断」サービスの提供開始が発表された。
打ち出しているコンセプトの違いによって、集まる企業や団体の性質も異なってくる。こうしたイノベーション拠点に足を運ぶ際は、それぞれのコンセプトや運営母体、パートナー企業等を確認しておくと良いだろう。