「出島」施策を成功させるには
多くの企業がイノベーション施策として「効果あり」と評価するベンチャーとの協業や外部組織からの人材調達、そして「出島」を設置するといったオープンイノベーション施策を成功させる秘訣は何だろうか。
日本においてオープンイノベーションが進まない理由として「理想的な協業先を見つけにくい」という課題点が挙げられることがある。しかし「creww」のようなプラットフォームや、「Innovation Leaders Summit」で行われる「パワーマッチング」の注目度が高まるにつれ、マッチング基盤は着実に整備されてきている。今後もこの動きは進んでいくだろう。
「出島」施策については大前提として、前掲の調査結果でも評価と実施率のギャップが目立っていた「通常の制度とは切り離された特別な報酬体系や評価制度」をしっかりと設定する必要がある。さらに、既存事業を展開する企業本体とは切り離した組織として整備しつつも、本体とのコミュニケーションも疎かにしてはならない。「出島」で良いアイデアが生まれたとしても、企業本体からの協力を得られなければ必要なリソースも得られず、せっかくのイノベーションの種が芽吹く前に無為になってしまう危険性があるからだ。
人材採用については、特許庁が2019年3月29日に発表した「オープンイノベーションを活性化するための体制や環境整備に関する調査研究報告書」を見ると、「外部人材の採用」と「社内人材の登用」を両軸で進める必要があると述べられている。特に外部人材の採用については「出島向き」な人材を出島部門だけでなく企業全体に配置し、社内人材に関しては既存事業と出島間の交流を促進するため、積極的に「出島」での活動に登用するといった工夫が必要だとまとめられている。
今回取り上げた調査結果から、実際に出島を設置した企業の多くが何らかの効果を感じている一方で、改善点も浮き彫りになった。「出島」を狙い通り機能させるには、企業本体も含めて効果的な組織整備や人材採用・配置、コミュニケーションの取り方を考えていく必要がある。「出島」を設置する際は、包括的視点から作られた綿密な計画が求められそうだ。