さらには、後で説明するが、パリの“station F”では、巨大な施設の中で、いわば人工的に、そのようなカオスの状態を作り出すことに成功しつつあるということだと思う。
また、第4回で登場したエストニアもカオス状態で、そうした中で1人の日本人が現地でVCを立ち上げ、インナーサークルに入って活躍していると聞く。カオス状態であれば、そのようなチャンスも巡ってくるのである。
イスラエルのベンチャーエコシステムは総じてうまく機能しており、また、ITセキュリティーとか創薬、医療、福祉、エネルギー、ものづくりのようなテック系が多く、さらには大学発ベンチャーが主流となっているなど、日本がこれから伸ばしていくべき分野での進展が著しく、大いに参考にすべきところがあると思う。
2014(平成26)年7月には、当時の茂木経済産業大臣がイスラエルを訪問し、イスラエルの経済大臣との間で産業R&D協力に関する覚書に署名し、さらには2015(平成27)年1月には安倍総理大臣が訪問するなど、今後の連携の発展が期待される。
日本企業の拠点はほとんどないが、そんな中、唯一サムライインキュベートだけがテルアビブの目抜き通りに事務所を構え、日本とイスラエルの橋渡し役を担っている。実に先見の明のある選択である。同事務所によれば、最近の中国や韓国のイスラエル進出は目を見張るものがあり、日本企業は出遅れているということであった。
テルアビブ大学関連の医療機器のインキュベート施設も訪問できたが、驚いたことは、1台数億円はするという検査設備がずらりと勢ぞろいし、施設入居者は自由にそれらを使うことができるということだ。このような環境は日本にはまだないだろう。
イスラエルを巡る誤解
実際にイスラエルを訪問してみて、これまで言われているいくつかの誤解を解いておいた方がいいと思う。