日本の30年先を行くエストニアのプログラミング教育

数字で見るオープンイノベーション(4)

市川 隆治/2018.10.9

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中世の面影を色濃く残すタリン旧市街城壁の上から撮影。尖塔は聖オレフ教会(Oleviste kirik)。その向こうにバルト海につながるタリン湾を望む。

 日本のオープンイノベーション促進には何が必要なのか? 通商産業省/経済産業省で貿易振興、中小企業支援などに携わり、現在はベンチャーエンタープライズセンター理事長を務める市川隆治氏が、諸外国の実例とデータに基づき、オープンイノベーションの環境について議論を重ねていく。(JBpress)

「就社」がゴールの日本の労働市場

 第2回の寄稿でベンチャーエコシステムの要素を振り返り、盛り上がりに欠ける理由は労働市場と教育の問題にあると指摘した。

【第3回】「ベンチャーを阻む日本の規制をどう排除するか?」(http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/54194

 いよいよこれからベンチャーエコシステム(生態系)の、地面の下で見えていない労働市場と教育について話を進めていくこととする。

 まずは労働市場から。

 日本の労働市場の特徴としては、新卒一括採用、社内研修、終身雇用、そして年功序列といったところであろう。少しずつ変化してきているといえども、これらの慣行は基本的には維持されてきている。

 それがなぜ、ベンチャー振興に悪影響があるかと言えば、第2回のベンチャーエコシステムで論じたように、起業家に向き、起業家として成功する可能性が高い優秀な人材が大企業の中に囲いこまれ、スピンアウトしようという気力が出てこないからである。

 新卒一括採用では、学生たちの目標はとにかく安定した名のある大企業への就職ということになる。それは「就職」ではなく、「就社」だとの指摘もあるくらいだ。「嫁ブロック」「親ブロック」があるという話は既にしたが、社会全体がいい大学を卒業し、いい大企業に就社することを盲目的に善としてきた。

 業務を通じて社内政治も学び、定年まで同じ会社で過ごす。「メンバーシップ制」とも言われるが、一旦大企業のメンバーとなってしまえば、最後までメンバーとして行動する。従って、個人の能力だけではなく、名刺の肩書きが重要となる。

 しかも、最近は海外赴任すらも忌避し、本社に留まろうとする傾向が強いと聞く。しかし、大企業に将来展望がないとしたら、こうした慣行は改めざるを得ないだろう。