ファンマーケティングを兼ねた「クラウドファンディング」、頼りになる「補助金」
最後に、エクイティにもデットにも含まれない手法にも触れておこう。
まず、最近流行りのクラウドファンディング(調達法⑨)だ。ファンマーケティングなど広報的な効果を狙って用いられることも多いが、起業資金の調達手法としても活用されている。東京都はクラウドファンディング利用に伴う手数料の補助や事業計画作成の相談を受けつける等、日本政策金融公庫と連携して「クラウドファンディングを活用した資金調達支援」を行っており、注目度の高さが伺えるところだ。
アイデアやサービス、ビジネスモデルをプロジェクトとして公開し、賛同者から資金を集めるクラウドファンディングの手法は、これまで取り上げてきた手法とは違った審査基準で出資可否の判断が成されることも多い。
クラウドファンディングサイトを利用する一般ユーザーは、目の肥えた投資家達とは全く違った観点でプロジェクトの価値を判断することもある。他の手法では資金を集めづらかったプロジェクトでも、クラウドファンディングを利用すれば目標金額を調達できる可能性があるのだ。
購入型や寄付型であれば出資者に金銭を返済する必要はないし、手数料以外に多額の自己資金を用意する必要もない。出資者の反応から市場のニーズを知ることができるし、期間内に目標金額を調達することができれば対外的に誇れる実績となる。
一方で、クラウドファンディング自体は珍しい手法では無くなってきていることは覚えておきたい。日々多くのプロジェクトが立ち上がる中で、出資者に選ばれるためにはどういう見せ方をしたら良いのか、各クラウドファンディングサイトや事業の見せ方をよく研究する必要がある。また特性上、秘匿性の高い事業の資金調達には向かない。
<クラウドファンディングのメリット>
・投資家や金融機関とは異なった評価により出資を集められる可能性がある
・仕組みによっては金銭の返済義務がないこともある
・手数料以外の自己資金は不要
・テストマーケティング/ファンマーケティングの側面も持たせられる
・成立した場合、対外的に誇れる実績とできる
<クラウドファンディングのデメリット>
・プロジェクトが多数起案されてきており差別化に腐心する必要がある
・秘匿性の高い事業は実施しにくい
最後に、国や自治体による補助金(調達法⑩)に触れておこう。代表的なものは下記の2つだ。
・創業支援事業者補助金
・地域創造的起業補助金
公募によって選ばれた事業者に対し、国が経費等の補助を行う制度で、いずれも今年度(平成30年度)の公募は終了している。
国や地方自治体による助成金や補助金は募集期間が短いことが多く、募集要項も異なるため、意識して情報取集していないと存在すら知らないままチャンスを失う可能性も高い。自治体が中小企業を応援する目的で行う施策を見逃さないために、創業時のみといわず起業後も定期的に各自治体のホームページや中小企業庁の「ミラサポ」などをチェックすることをお勧めしたい。
申請書類の準備が煩雑、募集期間が短い等のデメリットもあるが、返済不要というメリットは大きい。公募形式ということで、競争相手の多さを思って尻込みしてしまうかもしれないが、平成30年度の創業支援事業者補助金の採択結果によれば、168件の応募のうち134件が採択されている。十分、チャレンジする価値があると思える数字ではないだろうか。
<補助金のメリット>
・返済義務がない
・採択率も決して低くはない
<補助金のデメリット>
・募集期間が短い
・情報に触れる機会が限られている
・申請書類の準備が煩雑
・公募のため競合と比較される
まとめ
今回は起業時、起業直後の主な資金調達方法について紹介した。目標額の調達を最優先にしたいのか、今後の事業拡大も見据えたパイプ作りも視野に入れたいのか等、目的や事業の性質によって最適な方法は異なってくる。
資金の調達方はスタートアップ自身が選択できるもの。話題になるからといって無計画に株式を発行したり、資金調達自体が目的になってしまったりといった事態は避けたいところだ。メリットやデメリットを加味した上で、目的に合った調達方法を選びたい。