手段を目的化してはいけない

――オープンイノベーションの一環として、スタートアップ企業を支援するためのビジネスコンテストや「アクセラレーションプログラム」などを開催する企業が増えています。ただ現時点では、そこから伸びたスタートアップ企業や協業の枠組み、あるいは新規事業があるのかというと、まだ成功しているとは言いにくい現状があります。

秋元 あくまで私が把握しているケースにもとづく見解ですが、日本の大企業が取り組むオープンイノベーションは「手段の目的化」の傾向が強くなっているように思います。つまり、オープンイノベーションという題目に沿った活動をすること自体が目的になってしまっているケースがあるのではないかと。

 今後は、コンテストやプログラムの終了後に、自社やスタートアップ企業それぞれに何が生まれたのかを冷静に評価し、それをどのように発展させていくか具体的に議論することが大切でしょう。大企業がスタートアップ企業から新しいアイデアを得たとか、スタートアップ企業が大企業から送客を受けた、といったところで終わらせてはもったいない。新しい市場を創造するといった大きな目標を置いて中長期で取り組むべきと考えます。

「失敗しないため」の組織・人事評価が阻害する

――なぜ短期の目標ばかりに目がいきがちなのでしょうか。

秋元 企業側の担当者としては、それが上層部に対して分かりやすく説明できる実績になるから、というのが大きな理由でしょう。スタートアップ企業と組んだからといって、すぐに新ビジネスの芽が出るわけではありません。けれども、ビジネスコンテストやアクセラレーションプログラムを実施すると話題になり、とりあえず実績をあげたことになります。

──企業側の評価の仕組みに問題があるわけですね。

秋元 オープンイノベーションを成功させたければ、企業側における組織、人事、そして評価体系の見直しが必要です。

 新規事業の立ち上げを成功させるには、一定期間の間にスピーディーに試行を繰り返して失敗を重ね、その経験からうまくいく方法を見いだすというプロセスが欠かせません。最近、ビジネスの世界で使われるようになってきたリーンスタートアップやアジャイルとかいった言葉は、まさにそのプロセスを指します。