主要産業を軸に、地方もイノベーションに積極的なドイツ
全世界で毎年80万社のスタートアップが起業するも、うち9割は初年度で失敗している実態を受け、「オープンイノベーションで多くのコラボレーションパートナーをつくり、マーケットからのフィードバックを早めに得ることが大事」と説くChristian氏は、EUとドイツを中心に触れた。
EUはポテンシャルがあるのについていけておらず、ベンチャーキャピタル投資も不足している側面があることを受け、EUにとどまらず、世界と協力しながらやっていこうという、「オープンイノベーション 」「オープンサイエンス」「オープントゥザワールド」が叫ばれているという。
たとえば、オープンイノベーション政策支援として、2014年、産業や大学、R&Dセンター、エンジェル投資家、個人事業主、クラウドソーシングを結びつける「OISPG(The Open Innovation Strategy and Policy Group)」を例として挙げた。市民をイノベーションプロセスに直接関与させることで実生活で迅速な起業家精神を育成し、雇用の創出や持続可能な経済、社会的成長を促進するというもので、ヨーロッパ全体で各国や組織が協力体制のもとイノベーションを実現する動きがとられているという。
一方、ドイツは政府、16州それぞれ予算を持ち、研究機関や発明、オープンイノベーションに取り組んでいる。各州にそれぞれ強い産業が点在しているため、地域単位でイノベーションが起こりやすい環境なのが特徴だ。なかでも機械やエンジニアリングに力を入れており、ドイツの主要産業のひとつでもある自動車産業を筆頭に、ホテルやタクシーなどプラットフォームがディスラプションしていることへの対抗策が求められているという。
ドイツの民間の支援状況を見ると、ドイツテレコムは17億ユーロ、SIEMENSは8億ユーロをスタートアップに投資し、SAPは2,700社のスタートアップに起業支援など続く。大手企業はベンチャーキャピタルやファンド経由投資、アクセラレータ経由でスタートアップを獲得し、中小企業はプラットフォーム経由でアイデアを募集し直接投資するケースが多いとのこと。
政府としてはハイテクストラテジーとアカテックストラテジーを行っている。前者は16州のなかにクラスターを作り、研究機関、大学、民間企業が公的機関に依頼し、オープンイノベーションに取り組むというもの。後者は民間と企業連携の全体的なドイツのイノベーションを支援するというものだ。
ドイツ発「Industrie 4.0」は、シリコンバレーにドイツはどう対応していくか?という観点から様々な社会・製造業に革命を起こすことを目的に立ち上がっている。ドイツの文部科学省や経済産業省がリードして取り組んでおり、工場同士、商品と機械、機械間のコミュニケーションを可能にすべく、ドイツとしてどういう企画でどのような構造でものを作り上げるかを世界発信している。
ここで大事にしているのが「統一された規格を出す」こと。海外のスタートアップとコラボレーションするときに文化の壁に悩まされることが多いためだ。
ほか、クラウドソーシングでスタートアップや研究機関のアイデアソーシングをプラットフォームとして展開のほか、女性専用のスタートアップ支援「WEP(Women’s Empowerment Principles)」、ICTをメインにした企業を集めてシリコンバレーに送り出す「German Accelarator」を紹介。「High-Tech Start-up Fund」というミュンヘンやベルリン等の大学研究機関から卒業し、スタートアップを立ち上げることを支援しているファンドも存在するという。
エンジェル投資家に対しては税金20%削減を優遇し、ドイツの経済産業省は半年に一度の割合でスタートアップナイトを開催するなどの投資機会を増やす策もあるとのことだ。