例えば、定年時に末子がまだ学生で教育資金が必要なことはあるし、夫婦2人の生活に適した自宅のリフォームも考えられます。子どもの結婚や孫の教育資金などへの援助、親が健在ならそのQOL(生活の質)を高める援助や介護資金もあるでしょう。
いずれも相談されれば、ぜひとも実現したい資金です。自分が長生きすればするほど、このような機会が増えていきます。だからこそ、まとまったお金である退職金は一気に使わず、しばらく様子を見ながら「守る・増やす」を上手に考えることが大事になります。
55歳から始めても10年間の運用が可能
退職金を守り・増やすには「投資」が必要になります。退職して即投資へ――ではなく、早めに勉強を始めて、退職前から少額ずつ投資を始めておくのが理想です。
多くの大企業では、50歳を過ぎたあたりで老後のための資産運用を研修プログラムで提供しています。55歳で投資を始めても、年金受給年齢の65歳までは10年間あります。それだけあれば、長期運用によるリスクコントロールは十分に期待できます。
しかし、退職金運用に関する研修プログラムが整っていない企業もあるでしょう。自助努力のみということになりますが、取引のある金融機関で退職金運用セミナーを受講するなどして、特に早めの準備を心がけたいところです。
「退職金専用定期預金」で冷却期間も
退職が間近だけど投資の準備がまだ・・・という方は、銀行が提供している「退職金専用定期預金」にいったん預けて、その期間中に準備を進める方法があります。預入期間は3か月の定期預金が多いですが、なかには半年や1年というものもあります。これに預けて、いちど冷静になって退職金運用を考えるのがよいでしょう。
退職金専用定期預金で注意したいのは、投資信託の購入とセットにするという条件で金利が比較的高いものがあることです。この場合は、購入条件となっている投資信託のリスクとコスト(販売手数料や信託報酬など)を見極めたうえで預けるかどうか判断してください。
退職金は、金額でも老後資金という面でも大きな意味を持つお金です。投資の勉強など早めの準備は大事ですが、退職後にまとまったお金を焦って使うことはありません。まずは退職金をきちんと把握し、住宅ローンの繰上・一括返済の是非や生活費(家計)のダウンサイジングなど、身近な出費から見つめ直してみるとよいでしょう。