IoTという「破壊的イノベーション」(Disruption)から生き残るために、すべての企業はAIで武装したハイテク企業へと業態を変革する必要に迫られる。
企業は自らの「なりわい」をどういう方向に進化させたら良いのか? 企業に強く求められるのは、視点を企業主語からお客さま主語へと180度転換し、お客さまの気持ちや行動の変化に真摯に向き合う姿勢に他ならない。
(参照:前回記事「巨大企業をなぎ倒していくIoTの凄まじい衝撃」http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/47868)
サービス・ドミナント・ロジック
例えば「自動運転サービス業」というIoT技術を基盤にした新規ビジネスにおいては、クルマは特定の個人だけが所有するものではなく、社会の公共財として共有・管理し、頻繁に利用されることによって初めて価値が生じる、という共通認識がある。
またナイキやアンダーアーマーが導入を推進している「スポーツトレーニングサービス業」では、センサー内蔵のシールやBluetooth通信デバイス、生体データを可視化するタブレット端末などモノ単体に価値があるのではなく、お客さまのエクスペリエンスとデータを統合し、一気通貫したトータルのサービスの形になって初めて価値が生まれるのである。
企業のマーケティング戦略を研究する立場から、こうした新しいムーブメントをいち早く看破したのが「サービス・ドミナント・ロジック(Service Dominant Logic)」という考え方である(「マーケティングのための新しい支配的論理の進展」、バーゴ・スティーブン・L、ロバート・F・ルッチ、Journal of Marketing Vol.68 2004年)。
サービス・ドミナント・ロジックは、「モノかサービスか」を二分法で考えるのではなく、お客さまとの価値の共創が起きることを前提にして、モノとサービスを1つの塊として捉えることにその特徴がある。製造業のサービス化や、モノとサービスを一体化させ、お客さまが買った後の使用価値や経験価値を高めることを主張しているという点で、『経験経済』(B・J・パインII、J・H・ギルモア著)や『経験価値マーケティング』(バーンド・H・シュミット著)の考え方とも相通じるものがある。