また、サービス・ドミナント・ロジックはウーバー(Uber:ライドシェアサービス)やエアビーアンドビー(Airbnb:自宅の時間貸しサービス)に代表される「シェアエコノミー」や、近年、注目を浴びつつある「サービスデザイン」いうビジネストレンドの理論的な背景になっていることはぜひ押さえておきたい。

 こうした考え方に立つと、自ずと「お客さまの定義」と「企業のマーケティングに対するゴール」が大きく変わる。

「お客さまの定義」に関しては、お客さまは「企業の提供する商品やサービスについて対価を払って購入する人」ではなく、「企業(ブランド)が提供するサービスの背景にある考え方に共感し、サービスの利用者であるとともにサポーターでもある人」と定義を改める必要がある。

 また「企業のマーケティングのゴール」については、今までのように競合に対して優位性のある商品やサービスを生み出し販売する「交換価値(Value in exchange)」に注目するのではなく、商品やサービスをお客さまが使用する段階における「使用価値(Value in use)」に注目しなければいけなくなる。「使用価値(Value in use)」とはお客さまのエクスペリエンス、とそのまま言い換えることもできるだろう。

ゴープロの成功に隠された、IoT時代のゲームチェンジ

 ゴープロ(GoPro)の創業者/CEOのニコラス・ウッドマンは昨年7月、新製品のプロモーションで来日した際、日本経済新聞のインタビューでこのように答えている。

「ゴープロの顧客はカメラという『モノ』ではなく、その製品を使うことで素晴らしい作品が生まれるという『エクスペリエンス』に対してお金を払っている。われわれは『製造業』というより『コンテンツ産業』に身を置いていると考えている。ハードウエアは大切だが、あくまでもコンテンツを生み出す過程の入り口にすぎない」

 お客さまの「交換価値(Value in exchange)」から「使用価値(Value in use)」へという生活価値観のシフトを敏感にキャッチすることで、ゴープロは「自撮り」という新しいエクスペリエンスを創出することに成功した。

 そして、エクストリーム(極限状態)な自撮り映像に熱狂するブランドのサポーターの推奨や評価の力によって、ほぼ広告投資ゼロでマーケティングの拡大再生産のループを回すことに成功したのである。

 ここで大切なことは、新しい学説の誕生やテクノロジーの進化ではなく、むしろお客さまの考え方や行動そのものの変化である。ゲームチェンジの手がかりはお客さまの中にある。お客さまが企業のマーケティングを動かす時代がまさに到来していることに注目すべきなのである。

 ソーシャルネットワーク導入(2006年)以降のデジタライゼーションの流れの中で、成功の鉱脈を掘り当てたゴープロのような企業のサクセスストーリーにIoT時代の事業経営やマーケティングを成功に導くヒントが隠されている、と言えよう。