J-SPARCが描くJAXA×企業の宇宙ビジネス

宇宙市場は無限の可能性を秘めている

JBpress/2018.12.25

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 さまざまな業界で異業種同士がタッグを組んでイノベーションが進む中、宇宙をテーマにした壮大なスキームが始動した。宇宙航空研究開発機構(JAXA)が民間企業と新たな事業を共創する研究開発プログラム『宇宙イノベーションパートナーシップ(J-SPARC)』がそれだ。J-SPARCを指揮するJAXA 新事業促進部長・岩本裕之氏と、連続新規事業家として知られ、JAXA ビジネスプロデューサーの立場でJ-SPARCに参画する守屋実氏に、意気込みとプロジェクトの現状を聞いた。

岩本裕之氏(以下、敬称略) 宇宙は、以前と比べてぐっと身近な存在になりました。GPSや衛星放送など、普段格別に意識することなく、われわれは宇宙の技術を享受しています。これは取りも直さずテクノロジーの進化の賜物です。ただ、適用されている範囲はまだ限定的だと考えています。そこでJ-SPARCでは、ロケットの打ち上げや人工衛星といった技術だけでなく、例えば宇宙に行った先の生活など、幅広くビジネスに結び付けていきたいと考えています。

JAXA 新事業促進部長・岩本裕之氏

守屋実氏(以下、敬称略) JAXAはこれまでも、異業種とのコラボを行ってきたと思いますが、改めて今回のJ-SPARCを立ち上げた狙いはどこにあったのでしょうか。

岩本 J-SPARCは事業化までを視野に入れた、民間企業とのパートナーシップ型の研究開発プログラムです。現在は、「宇宙を楽しむ(宇宙旅行、ARやVR、衣食住)」「社会に貢献する(宇宙輸送、ビッグデータ、通信・測位など)」「活動領域を広げる(軌道上サービスや月・惑星探査)」という3分野で産業創出を考えています。具体的な取り組みはいくつかありますが、オープンになっているものでは、ワンテーブル(宮城県名取市)とのプロジェクトがあります。これは、防災用食品と宇宙食をテーマに事業展開を進めるものです。J-SPARCでは、今まで関わりがない業種の方とのイノベーションを検討することも多く、その広がりに私自身“ワクワク”しています。

J-SPARCが取り組む主な事業テーマ
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守屋 これまで宇宙といえば、完全にプロの世界でした。でも、将来は何十万人、何百万人という一般の人が宇宙に行く時代になります。例えば食の問題でいえば、今は宇宙飛行士がプロだからフリーズドライ食でも耐えられます。でも、これからはそうはいきません。日本人は食事にこだわるので、宇宙でも質の高い食の提供で活躍できるのではないでしょうか。

岩本 そうですね。宇宙空間で過ごすことが一般化すれば、衣食住は地上並みの快適さが求められるでしょう。地上と同じ環境を提供できること自体が大きなビジネスチャンスになりますね。ところで、新規事業開拓の専門家として、守屋さんは、ビジネスを立ち上げる際に大事なことは何だと思いますか。

守屋 タイミングが重要だと思います。政府主導だった宇宙ビジネスに民間が参入しやすくなった今は、まさに好機到来と言えます。それを加速させる体制づくりが、JAXAの役目だと思います。例えばJAXAが持っているデータや情報の開示、法的な障壁があれば省庁に働き掛けて解決するなど、民間企業では解決できない部分のサポートが必要でしょう。

岩本 今米国では、イーロン・マスクやジェフ・ベゾスをはじめ、民間企業が独自の宇宙計画を立案し、政府とイコールパートナーとして事業を推進しています。われわれもJ-SPARCを通じて、あらゆる角度から宇宙技術とパートナー企業のビジネスを掛け合わせ、新たな事業を展開していきたいと思います。ただ、国益としてロケットを持っておく必要はあるので、コアな部分はJAXAが維持していきたいと考えています。

守屋 J-SPARCは二つの任務を負っていると思います。一つは、JAXAの公正な機関としての立場から、民間の要望を受け入れる窓口になること。もう一つは、意思を持って政府や民間に働き掛ける役割です。これをJ-SPARCで定める7年間、必死になって実行し続ける必要があります。そうすればきっと大きな実績が残せると思います。

岩本 これまで全方位で多くの民間企業との協業を模索してきましたが、どういった形でアプローチをしていけば、宇宙ビジネスで成功できると思いますか。

守屋 基本的には「1点突破の全面展開」です。一つのことに集中して、そこに対してあらゆる手立てを試す、ということです。宇宙の市場は無限の可能性を秘めています。あれもこれもと手を付けるより、1点に絞っても十分大きな成果が得られるはずです。狙った事業が花開けば、100社も200社も勝利者が出てくる可能性があります。宇宙はそれくらい懐の広いマーケットだと思います。

JAXA 新事業促進部 事業開発グループ 上席/J-SPARCプロデューサー・守屋実氏

岩本 確かに、その見極めがこれからの課題ですね。ただ、J-SPARCが立ち上がってまだ半年程度ですが、仲間が増えてきたことは大きな成果だと感じています。JAXA内部からも、「J-SPARCが面白いことをしている」と理解され、本業はあるけれど、例えば10%のリソースを使って“一緒にやりたい”と、声を上げてくれる人も出てきています。

守屋 いい雰囲気ですね。実際にJAXAの中に入ってみて私が驚いたのは、意思決定のスピードが速いこと。7年間の計画の下、現状のスピーディーなペースを維持して走り切れば、日本の宇宙ビジネスに、今後大きな変化が起きるに違いありません。

岩本 宇宙の話題が好きな人、よく星を見る人、宇宙飛行士に憧れを持っていた人…、宇宙に関心がある人は多いでしょう。一方で、宇宙=国家事業で、「敷居が高い」「お金が掛かる」というイメージを持たれがちです。でも、J-SPARCの推進によって確実に敷居は低くなっています。まだわれわれがアプローチできていない分野は多々あります。一緒に未踏峰の頂きを目指す企業の参加を待っています。

守屋 そうですね、宇宙市場というこの上なく大きな市場にチャレンジするわけですから、ありとあらゆる産業にチャンスが存在していると思います。それと同時に「手を挙げればもうかる」という姿勢では、全く歯が立たない。そういう難しさを併せ持っているとも思っています。J-SPARCとともに成し遂げるまで不退転、という「本気を楽しむ仲間」を募集しています。ご連絡、お待ちしています!

●お問い合わせ先:
国立研究開発法人 宇宙航空研究開発機構
MAIL : J-SPARC@ml.jaxa.jp
 

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