App Storeで配信されるアプリは、アップル以外の決済システムをアプリ内で利用することが認められていない。アプリ開発者は別途ウェブサイトなどで自社決済サービスを設置することが可能だ。だがアプリ内に開発者の決済サービスへのリンクを設けたり、アプリ内で告知したりすることは禁じられている。

 これまでは、「アプリ内で入手した利用者のメールアドレスを使って、電子メール経由で他の決済方法があることを知らせてもいけない」とされていた。今回の合意に伴う変更で、アップルは「電子メールなどの通信手段を介して外部決済手段の情報を利用者と共有することができる」とした。ただし、「利用者は(開発者から)連絡を受け取ることに同意する必要があり、これに同意しない権利を有する」という条件も付けた。

 ニューヨーク・タイムズによると、アップルの幹部はこの集団訴訟の和解について報道陣に対し「開発者の勝利だ」と説明した。プレスリリース発表のタイミングも手伝って、記者らはすぐさまツイッターに投稿。大急ぎで原稿を書いてネット媒体に記事を掲載した。だが、「開発者にとって大きな転換点」となどと題されたそれらの記事は不正確なものだったと同紙は翌8月27日付の記事で伝えた。

 アップルは、「単に電子メールなどの通信手段を用いた、外部決済手段の案内」を許可しただけ。これが当初は、「iPhoneのアプリ内で、外部決済が利用できるようになり、アップルに手数料を徴収されない方法が広がった」などと誤解されたという。

原告弁護士に3000万ドルの成功報酬

 今回の一連の報道は結果的に、アップルが開発者や裁判所、規制当局、議員などに大きく譲歩したという印象をもたらし、同社にとって好都合だった。訴訟という大きな問題を解決するためにアップルが払った犠牲はごくわずなものだったとニューヨーク・タイムズは報じている。

 前述した開発者支援基金は総額1億ドル(約110億円)。だがその3割に当たる3000万ドル(約33億円)を原告側の弁護士が弁護費用や和解の成功報酬金として受け取ることになるという。

 結局のところ、集団訴訟の勝者は中小のアプリ開発者らではなく、彼らが雇った弁護士と被告のアップルだったと同紙は報じている。

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