中国の個人信用スコア

 今般、アリババの子会社Ant Groupが史上最大額のIPO資金調達を行うことで話題を集めています。このAnt Groupが無料で提供し、中国で近年爆発的に普及したのが、個人信用スコア“Zhima Credit”(ジーマクレジット、芝麻信用)です。私が中国に出かけた際も、中国の方々に「スコアを見せて」と頼めば(あるいは、頼まなくても自発的に)、ほぼ皆さんが見せてくれます。私の印象では、中国の人々は「ゲーム感覚」で、自分のスコアを上げることを楽しんでいるように見えました。

 Zhima Creditは、個人の信用度を350点から950点までのスコアで示しており、個人の日々の行動や経済活動などに基づき、点数は日々変わります。このスコアが上がるほど、借り入れがしやすくなることはもちろん、家やレンタカーを借りやすくなったり、ホテルや空港でのチェックインにおいて優遇されるといった、さまざまな特典が受けられます。さらに、Zhima Creditのスコアの高い人はビザを取りやすくするといった便宜を図っている国々もあります。

©Ant Financial社

 Zhima Creditのスコアは、大きく分けて5つの要素に基づいて計算されます。すなわち、①Credit History(クレジットカードの請求や公共料金などをきちんと支払っているかどうか)、②Individual Profile(学歴、職業、住所など)、③Property(保有する家や車などの資産)、④Bahavioral Preference(日頃の消費活動など)、⑤Social Network(SNSでの発言や交友関係など)、です。

 この中で、とりわけSocial Networkなどは、日本の感覚には馴染みにくいものです。SNSなどでの発言が自分の信用スコアに直接響き、住宅ローンなどが借りにくくなるかもしれないと思えば、人々は外に向けて発言することに委縮するようになるでしょう。さらに、Zhima Creditの仕組みでは、スコアの高い人とSNSなどでつながっているほど、自分のスコアも上がります。「お金持ちと付き合うほうが得」だとあからさまにスコアで示されるのは、剥き出しの資本主義の姿を見せつけられている感じがして、そこまではちょっと勘弁して、という印象を禁じ得ません。