(写真左から)キリンホールディングス 財務戦略部長 松尾英史氏、取締役副社長 CPO(グループ人財統括) 坪井純子氏、取締役常務執行役員 CFOの秋枝眞二郎氏、一般社団法人日本CFO協会/日本CHRO協会シニアエグゼクティブ 日置圭介氏(撮影:榊水麗)

 キリンホールディングス(HD)は、2019年以降のヘルスサイエンス(HS)事業におけるM&Aを起点に、同事業を成長の柱と位置付けグローバル展開を本格化させている。その一環として、人事面ではタレントマネジメントを従来の「事業軸」から社員の専門性に基づく「機能軸」へと転換。財務面ではERPのグローバル導入による経営管理の高度化を進めている。キリンHD取締役副社長CPO(グループ人財統括)の坪井純子氏、取締役常務執行役員CFOの秋枝眞二郎氏、財務戦略部長の松尾英史氏、そして経済産業省による「グローバル競争力強化に向けたCX研究会()」の座長を務めた日置圭介氏が、経営基盤変革の必要性と手法について意見を交わした。

※CX=コーポレートトランスフォーメーション:企業変革

世界に通用する“人”を育てるための新たな制度

──キリンHDでは、事業や配属部門を軸に人材を育成・配置する従来の「事業軸」のタレントマネジメントから、社員の専門性を重視した「機能軸」のタレントマネジメントへのシフトを行いました。その背景にはどのような課題があったのでしょうか。

坪井純子氏(以下、敬称略) 1つは、企業の「人財」を取り巻く環境が大きく変わっていることが挙げられます。昭和、平成の時代に比べて変化のスピードは格段と速くなり、企業は次々にイノベーションを起こしていかなければ生き残れない時代です。併せてデジタルやAIの進化により、人に求められる役割自体も変化していくことが予想されます。

 その一方で、足元の課題として「入社してもどの職種に就くか分からない」という不安により、採用候補者の辞退率が上がっているという現状もありました。従来の事業軸のタレントマネジメントでは、入社後の職種の指定は限定的だったためです。

キリンホールディングス 取締役副社長 CPO(グループ人財統括)の坪井純子氏

 もう1つの重要な背景として、当社の事業ポートフォリオの拡大があります。キリングループでは、酒類・飲料事業、医薬事業に続く「第3の柱」として、HS事業の成長に力を入れています。これまでのビジネスでは、ある程度地域ごとに閉じた経営を行ってきましたが、HS事業では地域をまたいだグローバルな経営がいっそう必要になります。今後は日本で採用された社員が海外で勤務するケース、あるいはその逆などグローバル含む人財交流が増えてきます。

 人財マネジメントは、ポジションとタレントの掛け算ですが、海外と日本ではその発想が異なります。海外ではジョブ型、ポジションベースの雇用が基本であり、高い専門性を備えた人財がポジションを競います。一方従来の日本型雇用では、タレントベースで企業内で専門性を養っていくカルチャーがあります。こうした中で日本型と海外型のそれぞれの良さをハイブリッドにすることを志向しています。酒類、飲料・HS、医薬の幅広い事業を展開するキリンならではのユニークな人財戦略として、強みにしていきたい。こうした考えが、機能軸のタレントマネジメントにつながっています。