2027年以降に実用化予定の先進技術を搭載したコンセプトモデル「プジョー ポリゴンコンセプト」(出所:ステランティス)

 北米市場の不振やCEO交代といったネガティブな話題が注目されがちな多国籍自動車メーカー、ステランティス。しかし、電池工場の地域最適化や中国企業との連携強化を通じ、電動化分野で競争力を大きく高められる可能性を秘めている。世界初の量産型電気自動車「i-MiEV」の開発責任者・和田憲一郎氏が、ステランティスが進める電動化戦略と、日本の自動車メーカーが参考にすべき点を解説する。

ステランティスの誕生とその背景

 自動車メーカー「ステランティス」という名称を耳にした時、即座にその実態を思い浮かべる読者は多くないかもしれない。しかし、同社が傘下に収めるブランド群、プジョー、シトロエン、アルファロメオ、フィアット、ランチア、クライスラー、ジープといった名前を挙げれば、知っているという方も多いであろう。日本国内においてステランティスの知名度は限定的であるものの、その2024年における世界自動車販売台数は542万台に達している。これはフォード、ホンダ、日産自動車などを上回る規模であり、世界第5位の販売実績である。

 さらに、ステランティスはバッテリー式電気自動車(BEV)およびプラグインハイブリッド車(PHEV)の販売にも積極的に取り組んでおり、電動化戦略を加速させている。今回は、多国籍企業である同社が、電動化の推進によって競争力を大きく高めることが可能である要因について、筆者の見解を述べてみたい。