2025年3月期決算時のトヨタ自動車・佐藤恒治社長(出所:トヨタ)

 トランプ米政権が日本からの輸入自動車に課す関税は15%でひとまずの決着を見たが、日本の自動車業界は経営戦略の転換を余儀なくされている。生き残りと経営の高度化のために、国内の再編も急務だ。シティグループ証券などで自動車産業のアナリストを務めてきた松島憲之氏は、かつて予想した自動車産業の大構造変換が現実化しつつあるとみる。トヨタグループが大規模な再編で目指す新たな姿とは。

トランプ関税が15%で一応の決着を見たが大きな減益要因に

 自動車業界にとって極めて重要なリスク要因となっていた、トランプ米政権が日本からの輸入自動車に課す関税が、9月に15%に引き下げられた。元々は2.5%だった関税が一時は25%に引き上げられ、それが交渉の末に15%になったのだが、決して楽観視できるレベルではない。

 2025年4~6月期決算では、経営不振の日産自動車と米国への輸出依存度が高いマツダの2社が営業赤字に転落し、トヨタ自動車、ホンダ、スバルも大幅減益となった。各社の収益悪化の大きな要因は関税によるマイナス影響だった。

 2026年3月期の会社予想におけるトランプ関税のマイナス影響は巨額で、トヨタ自動車1兆4000億円、ホンダ4500億円、日産自動車3000億円、マツダ2333億円、スバル2100億円になるとしている。マツダやスバルなどのように、米国販売比率が大きく日本からの輸出依存度が高いメーカーが被る影響は極めて深刻だ。

 日産は2026年3月期の会社予想を公表していないが、他の自動車会社は大幅な収益悪化を見込んでいる。売上高営業利益率は各社が大幅な低下を予想しており、トヨタ6.6%(前年10.0%)、ホンダ3.3%(同5.6%)、マツダ1.0%(同3.7%)、スバル4.4%(同8.7%)となっている。