写真提供:©Vincent Isore/©Vincent Isore/IP3 via ZUMA Press/共同通信イメージズ ※Belgium, Denmark, France and Germany Out

 生成AIのビジネス実装が当たり前になった米国に対し、日本の伝統的な大企業の姿勢は依然として慎重だ。しかし、導入を進める先進企業も確実に増え始めている。『アフターAI』(シバタナオキ著/日経BP)から一部を抜粋・再編集し、AI導入の最新事例と今後の展開を読み解く。

 AI活用と切り離せないガバナンス問題。世界から注目を集める日本の法対応は、今後、世界標準となり得るのか?

世界で注目される日本の法対応

アフターAI 』(日経BP)

 ここで実際の法対応について目を向けていきましょう。

 AIガバナンスの歴史を見てきたときに、EUを中心としたヨーロッパと米国の駆け引きが行われてきたことは明らかです。インターネットからクラウド、そしてAIが登場してきて、米国によるデジタル植民地化が一層進んでいます。EUは法規制などで守りを固めてきましたが、その分だけ開発や利用の自由度は低下し、頭の痛い問題になっています。

 こうした米国によるデジタル植民地化は、日本も他人事ではありません。すでにデジタル赤字が3兆円に上っています。わかりやすく言えば、GAFAMやマグニフィセントセブンなどに日本企業が毎年3兆円を納めて続けているということになります。それでも、まだ日本は言語の壁がバリアになっていますが、ヨーロッパでは言語の壁は低く問題はさらに深刻です。

 羽深氏は、こうした問題に各地域の法対応の側面からメスを入れます。「EUは、AI法で正面からAIという技術に対して規制をかけています。本来、法規制というのは、あくまでも結果を規制するものであり、結果を達成するための技術やツールに対しては規制が介入すべきではありません。

 AI法は、AIという技術をターゲットにしてしまっていますから、これはかなり独特なアプローチの規制です。日本の場合、EUのように法規制で固めるのではなく、米国のように事前介入なしで問題が起きたら訴訟で戦うという方法でもありません。

「企業と政府が対話をしてマルチステークホルダーでベストプラクティスを形成しながら、本当に基本的な部分は既存の法律をアップデートする。そして本当に深刻なリスクが表面化した場合には、それぞれで個別に対応していく。そうした日本のAIガバナンスに関する法規制のストーリーは極めてリーズナブルです」(羽深氏)。