写真提供:DPA/Beata Zawrzel/NurPhoto/共同通信イメージズ
外部性(外からの視点)、柔軟性(新しい発想)、非常識(常識外れの思考)は、論理の齟齬(そご)を生み、「誤謬」(ごびゅう)を促す要因である一方、イノベーションを促進する原動力でもある。外からの視点は見落とされた問題を見つけ、新しい発想は今までにない方法論を生み、常識外れの思考は挑戦を後押しする。それらは誤謬も生みやすいが、イノベーションをもたらす力にもなる。『経営戦略の誤謬』(大驛潤著/同文舘出版)を一部抜粋・再編集し、成功企業のケースを元に、不確実性の高い時代に、競争力を保つための戦略の捉え方を紹介する。
既存事業の深堀りと新規事業の探索を両立するアマゾンとグーグル。急激に環境が変化し、先が見通せない“超競争時代”を生き抜くための能力を獲得する戦略的手法とは?
両利きの経営論の展開
『経営戦略の誤謬』(同文舘出版)
■ 両利きの経営論
ダイナミック・ケイパビリティ論と関連して、近年、特に注目されているコンセプトに、March(1991)を踏まえたO’Reilly and Tushman(2004)による「両利きの経営論」がある。両利きの経営論では、これまで環境変化に対して「適応」(転身)を果たすことができた企業とできなかった企業は何が違っていたのかという問題意識から、多くの企業の事例を分析している。
「両利きの経営論」とは、企業が現在の事業運営を効率的に行う一方で、新しいビジネスモデルや技術革新を追求する能力を持つ経営手法である。このコンセプトは、企業が同時に「深化」と「探索」を行うことができるようにするため、安定した運営と革新的な取組みの両立を目指すものである。
「深化」とは、既存の事業や資源を最大限に活用し、効率的に運営する活動を指す。これは、既存の市場での競争力を維持し、収益を安定させるための活動である。深化活動は、プロセスの最適化、コスト削減、既存製品の改良などを含む。これにより、企業は安定した収益基盤を築き、探索活動のリスクを補うことができる。
一方、「探索」とは、企業が新しい市場や技術、製品を探し出し、将来の成長のための新しい機会を見つける活動を指す。これには、新製品の開発、革新的なビジネスモデルの採用、スタートアップ企業との提携が含まれる。探索活動は、高いリスクと不確実性を伴うが、成功すれば大きな収益をもたらす可能性がある。
両利きの経営を実現するためには、組織構造や文化の柔軟性が求められる。企業は、深化と探索の両方を効果的に行うために、異なる部門やチームを設け、それぞれに適したリーダーシップとマネジメントを配置する必要がある。例えば、深化活動を担う部門は、効率性と安定性を重視し、慎重な計画と管理が必要である。一方、探索活動を担う部門は、創造性とリスクテイクを重視する文化が必要であり、迅速な意思決定が求められる。






