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外部性(外からの視点)、柔軟性(新しい発想)、非常識(常識外れの思考)は、論理の齟齬(そご)を生み、「誤謬」(ごびゅう)を促す要因である一方、イノベーションを促進する原動力でもある。外からの視点は見落とされた問題を見つけ、新しい発想は今までにない方法論を生み、常識外れの思考は挑戦を後押しする。それらは誤謬も生みやすいが、イノベーションをもたらす力にもなる。『経営戦略の誤謬』(大驛潤著/同文舘出版)を一部抜粋・再編集し、成功企業のケースを元に、不確実性の高い時代に、競争力を保つための戦略の捉え方を紹介する。
トヨタとBMWは、燃料電池の共同開発を進め、マイクロソフトとシスコは共同でクラウドサービスを提供する。なぜ競合企業が互いに力を合わせるのか。鍵を握る「協調戦略」とは?
競争と協調の戦略
『経営戦略の誤謬』(同文舘出版)
■ 協調戦略
Porter(1985)では、同業他社は競合他社と捉えられていた。しかし近年、他社とは競争するだけではなく、協調の面もあることが認識されるようになってきた。
協調の戦略とは、企業が競争ではなく協力を通じて市場での優位性を確保しようとする経営戦略である。これは、競合企業との間で技術共有、共同開発、マーケティング提携などを行うことで、相互の強みを活かし合い、共通の利益を追求するものである。
協調戦略は、企業が単独で達成するにはコストやリスクが高すぎるプロジェクトや市場参入において特に有効である。例えば、自動車業界では、異なるメーカーが電動技術の研究開発を共同で行うことで、市場における技術革新を加速させ、競争力を高めている。協調戦略は、競合を緩和し、資源の効率的な利用を促進する重要な手段である企業は、競合他社とも、戦略的に協調を行うことができるのである。戦わない、すみわけしながら手を組む戦略ともいえよう。
ここでは具体例として、自動車業界、テクノロジー業界を取り上げる。
まず、自動車業界では、異なるメーカーが電動技術の研究開発を共同で行っている。例えば、トヨタとパナソニックは、電気自動車用のバッテリー技術で協力している。この協力により、双方の技術力を結集し、より高性能でコスト効率の高いバッテリーを開発することが可能となり、市場での競争力が高まる。また、BMWとトヨタも、燃料電池技術において共同開発を進めている。これにより、開発コストの分担や技術の共有が実現し、技術革新が加速される。






