Tada Images / Shutterstock.com
スタートアップから大企業まで、宇宙ビジネスへの参入が加速している。ロケットや人工衛星の製造、打ち上げ、衛星データを活用したサービスまで、巨大市場の潜在性にかかる期待は大きい。本稿では、『投資家が教える宇宙経済』(チャド・アンダーソン著/加藤喬訳/並木書房)から、内容の一部を抜粋・再編集。国家主導の宇宙開発が「宇宙ビジネス」として大きく進展した背景を読み解く。
宇宙事業をリードするスペースX。イーロン・マスクCEOの下には、なぜ宇宙産業以外から超一流人材が集まるのか。
才能は挑戦で輝く――マスクが求めた“異能”人材の集め方
『投資家が教える宇宙経済』(並木書房)
「手順は熟考の代用品になりうる」。後年、スペースX社のイーロン・マスクがジーブにかけた言葉です。スタートアップ企業の急成長に対応するためには、厳格かつ体系化された雇用手順が不可欠という意味です。とは言え、重要なポジションを埋める際には、候補者への柔軟で偏見のない姿勢を保つことが大切です。
実際、ジーブが新たな転職に前向きだったのは、グーグル社の頑迷な雇用手順が退屈になったからです。スペースX社がジーブに採用を打診してきたのは最初のロケットを打ち上げる前でしたが、同社の経営手法を一目見るや惚れ込んだと言います。ジーブは当時を振り返って言います。
「少人数チームで『何度も試作品を作ってテストを繰り返し、短期間で完成度を高める』がモットーで、工場はエンジニアリングオフィスのすぐ隣。すべて一体化されていました。それまで航空宇宙産業といえば、ロッキード・マーティン社とベル・ヘリコプター社で体験した狭苦しい仕事スペース、遅々としたプロジェクト進捗、窓のない殺風景な職場というイメージだったのが、スペースX社に足を踏み入れるや、この会社がなぜ違うのかピンときました」
マスクがスペースX社をロサンゼルスで起業したのは、航空宇宙分野の人材が全米で最も集中していたからです。しかしジーブを仲間に迎えた頃、マスクは新たなアイデアや思考方法をスペースX社に注入したいと考えており、より広い地域から人材採用するようジーブに求めました。言い換えれば、宇宙産業界外からスカウトせよとの指示だったわけです。マスクはこう語ったそうです。







