新型プレリュードがデビューを果たした。モノグレードのワンプライスで、車両本体価格は617万9800円

長い前奏を経ていよいよ発売

 これまでプロトタイプ雪上試乗などのリポートをお届けしてきたホンダの新型プレリュードが、9月4日に正式発表されました。翌5日から販売も開始されるそうですが、それに先駆けて量産型のプレリュードに早速試乗してきました。

 初代プレリュードが誕生したのは1978年のこと。リトラクタブルのヘッドライトを採用した2代目の登場が1982年で、1987年に3代目、1991年に4代目、1999年の5代目からしばらく経って復活した新型は6代目ということになります。初代からの2ドアクーペのボディ形状はそのまま継承しながらも、新型は大きな開口部を持つハッチバックとなっているところが特徴です(5代目までは独立したトランクを持つ3BOXでした)。

プレリュードとしては初めてとなるハッチバックなので、テールゲートの開口部は大きい。後席を倒せばゴルフバッグふたつが収まるという

 ボディサイズは全長4515mm、全幅1880mm、全高1355mm、ホイールベースは2605mm。実は新型プレリュードはプラットフォームを含む多くの部分を現行のシビックと共有しています。ただし、ホイールベースはシビック(2735mm)よりも短くすることで、旋回性能の向上を狙ったディメンションとなっています。

伸びやかできれいなプロポーションのエクステリアは、前後のリフトを抑えるような空力性能も考慮されている。プラットフォームはシビックと共有だが、ホイールベースがプリュードのほうが短い

 エンジンもシビックと共通の2Lエンジン+2モーターのe:HEVで、エンジンのパワースペック141ps/182Nm、モーターのパワースペック184ps/315Nmの数値も同一です。

Honda S+ Shiftの効果は絶大

 ホンダのハイブリッドは電気式CVTの無段変速ですが、プレリュードには「Honda S+ Shift」が初めて採用されています。これは簡単に言えば、電気的にパワートレインを制御することで“仮想トランスミッション”を具現している機構です。例えば、Dレンジに入れたままでもシフトアップやシフトダウンを行い、その時に軽いシフトショックのようなものが感じられたり、それに合わせてエンジン回転数も変化したりするようになっています。手の込んだギミックとも言えますが、実際に運転してみるとこの効果は絶大で、とても気持ちよく運転することができるのです。

「多くの部分をシビックと共有」と書きましたが、サスペンションにはシビックとはいえタイプRのそれが移植されています。金属ばねと電子制御式ダンパーを組み合わせたサスペンションは、プレリュードというクルマのGT(グランドツアラー)的な特徴に合わせるべくあらためてチューニングをやり直し、タイプRのハードなスポーツ系から快適性に寄せたセッティングとしたそうです。なお、ブレーキもタイプRと同様のブレンボ製キャリパーが採用されています。

 インテリアは水平基調をベースに、見た目のノイズが少ないすっきりとした印象です。センターコンソールにはホンダ車ではお馴染みのシフトセレクターが置かれ、その左側にS+ Shiftのスイッチが配置されています。運転席と助手席では、クッション部をわざわざ作り分け、運転席はホールド性を、助手席は快適性を重視した座り心地にしたというあたりに、開発チームのこだわりが感じられます。

ステアリングパドルはメタル製、Dシェイプのステアリングを採用するなど、スポーティな演出が随所に見られる
シフトセレクターとHonda S+ Shift用のスイッチ

 ホンダのe:HEVはモーターのみでの駆動もできるので、バッテリー残量が十分であれば、プレリュードはスルスルと静かに動き出します。アクセルペダルをさらに踏み込むとエンジンが始動、スムーズに加速を開始します。ドライブモードは「スポーツ」と「コンフォート」の他に「GT」があって、これが一般的な「ノーマル」に該当するモードとなります。「動力性能と操縦性と快適性のバランスがもっともいい」とのことで、エンジニアのお薦めのモードでした。確かにゆったり流すようなドライブでは十分な加速性能と正確なハンドリング、そして快適な乗り心地が味わえます。

メーターはプレリュード専用のフルグラフィック

 これら3モードそれぞれで、前述の「S+ Shift」も設定できるので、都合6種類のモードがプレリュードには備わっていることになります。「S+ Shift」のボタンを押さないと、特に加速時にはハイブリッド特有のラバーバンドフィール(エンジン回転数が上がったまま、あとから加速がついてくる)を感じる場面がありますが、「S+ Shift」にすると加速時には回転計がテンポよく上がったり下がったりを繰り返しながら加速していくし、モードによってはブレーキを踏むと自動的にブリッピングをしながらシフトダウンもしてくれるのです。MT車の運転経験のある方であれば、きっとその感触にかなり近いと思われることでしょう。8段変速で加減速時にエンジン回転数をコントロールするのはすべて仮想ではあるものの、ダイレクト感やレスポンスなどが伝わってくると、クルマと繋がっているような気分になります。

車両重量は1460kgで前後重量配分は63:37。FFなのでフロントのほうが重いものの、運転中にフロントヘビーを強く感じる局面は少なく、後輪の接地性も高い

 ハンドリングはタイプRのサスペンションを使っているだけあって、ステアリング操作に対する反応がよく正確にクルマが動いてくれます。タイプRほどクイックではないので、ナーバスな動きもなく、でもこちらの思い通りに動いていると実感できる操縦性でした。乗り心地に関してもタイプRほど硬めではなく、でもノーマルのシビックよりは減衰が早くて振動がスッと収まるものでした。

 新型プレリュードの走る/曲がる/止まるに関しては、いい塩梅でまとまっていますが、気になるのはその価格。モノグレードのワンプライス設定で617万9800円です。室内の質感や装備には、600万円以上のクルマにしてはちょっとどうなんだろうというようなところが散見されました。また、そもそも2ドアクーペは日本で「見るのはいいけれど買うのは躊躇する」ボディ形状でもあります。発売直後は月販300台の目標を軽々と超えるでしょうか、それがどれくらい続くのか、今後も注目していこうと思っています。