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インドとその周辺国で形成される「環インド洋経済圏」は、急速な人口増加と経済成長を背景に、国際社会での存在感を高めつつある。本稿では『日本人は知らない!地理で読み解く「環インド洋経済圏」の潜在力』(宮路秀作著/ビジネス社)から内容の一部を抜粋・再編集。この海域で今何が起きているのかを明らかにし、市場拡大の可能性を考察する。
海洋国家・日本は環インド洋経済圏にどう関わっていくべきなのか。成否のポイントを探る。
日本はどう参画し、どう利益を得るか
『地理で読み解く「環インド洋経済圏」の潜在力』(ビジネス社)
■ 国際ビジネスへの扉
日本が「環インド洋経済圏」とどう関わるかを考えるとき、まず念頭に置くべきなのは、この地域が政治・経済・軍事のすべてにおいて世界の大国が衝突と協調を繰り返す舞台になりつつあるという点ではないでしょうか。
人口大国のインドや東南アジアの新興勢力、アフリカ東岸の成長市場、要衝としての中東湾岸地域など、これらが一堂に会するインド洋沿岸は、中国や欧米などの資本が集まり、各国政府も激しい開発競争を展開している状況です。
日本はどう参画し、どう利益を得て、さらにどのようにして安全保障面で自国を守るのかという問いが突きつけられています。特に日本企業にとっては、新興市場や巨大市場の存在が魅力的ですが、大国に翻弄される政治情勢の変動やインフラ不足といったリスクが各地に潜んでいます。
また地元政府との折衝には、汚職や利権争いが絡む場合があるかもしれません。インド洋を「自分たちには関係ない場所」と見なしてしまうと、世界的に進行する経済圏の変動に乗り遅れる可能性がありますが、実際に踏み込めば他の大国との利権争いにさらされるというジレンマも生じます。
日本は自国経済の大部分を海上輸送に頼る海洋国家ですので、もしインド洋航路に混乱が生じれば国内エネルギーや物流が深刻な影響を受けかねません。






