
2045年、建設技能者の数は2020年の半分にまで減少すると言われている。担い手の確保が難しくなる中で生産性向上は至上命題だが、建設業の労働生産性は他業界に比べて著しく低いのが現状だ。建設業界のムリ・ムダな慣習や仕組みを変革し、生産性と共に業界の魅力を底上げするために実施すべき「建設DX」について、芝浦工業大学の蟹澤宏剛教授に聞いた。
2045年問題に向けて解決すべき、建設業界の課題
はじめに、建設業を巡る法改正と現状を簡単に説明します。2024年に改正労働基準法が施行され、労働時間と残業時間の規制が始まりました。2025年には、改正建設基準法が施行され、いわゆる「第三次・担い手3法」※1が全面的に施行されます。
この改正は、建設業の担い手確保、生産性向上、地域における対応力強化を目的としたものです。具体的には、「労働者の処遇改善」「資材高騰に伴う労務費へのしわ寄せ防止」、そして「働き方改革と生産性向上」を3本の柱としています。
こうした流れの中で建設業界には、「4週8閉所」※2を原則とした労働関係法令と適正工期の遵守、日本の酷暑から労働者を守るための夏季一斉休暇の実現など、この業界を魅力あるものにすることが求められています。
※1:「建設業法・公共工事の入札及び契約の適正化の促進に関する法律・公共工事の品質確保の促進に関する法律」である担い手3法を、「建設業法」「入契法(公共工事の入札及び契約の適正化の促進に関する法律)」「品確法(公共工事の品質確保の促進に関する法律)」を一体とした「第三次・担い手3法」として改正
※2: 4週のうち8日を休みとする、建設業界における週休2日制の取り組み
一方、建設業の2045年問題とは、建設技能者の数が2045年に2020年の半分にまで減少することを指します。
さらに、現在の建設業では、他業界に比べて付加価値労働生産性が非常に低くなっています。近年、DXと共に生産性向上を進めている製造業と比べると、半分程度の数値しかありません。
1990年ごろの日本の建設業界では、天候に左右されない「全天候型施工」やロボットを駆使した「自動施工システム」など、世界最先端の自動化施工が実現していました。
その後、「失われた30年」を経たとはいえ、なぜ、現状のような生産性になってしまったのか。生産性の問題を考えることが、建設業界の将来にとって非常に重要です。
次から、生産性の意味と仕組みを改めて見直したうえで、生産性を上げていく具体的な方策を解説していきます。








