2024年度決算発表時の日産自動車 代表執行役社長兼最高経営責任者のイヴァン・エスピノーサ氏(出所:日産)

 日産自動車が、2万人の従業員を削減し7工場を閉鎖する経営再建計画を発表した。シティグループ証券などで自動車産業のアナリストを務めてきた松島憲之氏は、日産が講じるべき生き残り策の1つとして「自動車以外の新たな需要を開拓する」選択肢を挙げる。産業構造が激変し大再編が一挙に進む可能性がある自動車業界。経営者はこれまでの思考をどう切り替え、どんな決断を下すべきなのか。

自動車産業はいよいよ前例がない大再編時代に突入

 20年前から指摘されていたことだが、100年に一度の大変革と呼ばれる自動車業界の大再編がいよいよ現実化してきた。厳しいことを言うようだが、全ての自動車メーカーや自動車部品メーカーが生き残れるようなシナリオは描けない。

 今後は、ガソリンエンジン自動車で培った既存技術の延長線上の連続的なイノベーションではなく、自動走行やEVなどの新世代自動車がもたらす非連続的なイノベーション、別名「破壊的イノベーション」が主となる。新しい世界を生き抜くためには既存のビジネスモデルから脱皮して新たな変革を起こさねばならない。

 自動車業界の人々と生き残り戦略のディスカッションをすると、どうしても「自動車」という殻を破る発想に欠けていることに気付く。自動車を中核に置いた戦略構築しかできないのだ。50年以上もの間、自動車で稼ぐことで幸せな時間を過ごしていたから仕方ないという冷めた見方もできるが、今は経営の思考を大変革せねば生き残れないと覚悟すべきだ。

 ガソリン自動車で培った高度な技術を応用して、自動車以外の新たな需要も開拓して生き残りの道を開くという強いリーダーシップが必要になってくる。日本の自動車産業はそれを実現することができる高度な技術を有しているだけに、この変革を陣頭指揮できる優秀な能力を持つ経営者が現れれば、一挙に大再編が進む可能性もある。