ユニリーバ・ジャパン・ホールディングス 代表職務執行者 ジェネラルカウンセルの松井さやか氏(撮影:榊水麗)

 変化の激しい時代、企業はリスクマネジメントに追われ、現状維持で満足しがちだ。だが、グローバル競争の中で成長を続けるためには、変化をリードする姿勢も欠かせない。そのために、企業法務は単なる監視役ではなく、ビジネスを前に進める“推進力”であるべきだ──そう語るのが、ユニリーバ・ジャパン・ホールディングスで代表職務執行者 ジェネラルカウンセルを務める松井さやか氏だ。

 同社では、法務部門の責任者が持株会社の代表を兼ねるという、ユニークな体制をとっている。その背景と、これからの企業内法務の在るべき姿を聞いた。

法務部門の役割は、ビジネスを「止める」ことではない

――現在松井さんは、ユニリーバ・ジャパン・ホールディングスの代表と、法務部門の責任者を兼務しています。他社ではあまり見ないケースだと思いますが、どのような意図がありますか。

松井さやか氏(以下、敬称略) ユニリーバ・ジャパングループにはリーダーシップチームという取締役会に類似する組織があり、法務部門の責任者である私もその一員です。それに加えて日本の持株会社の代表を務めるのは、法務部門が果たす会社全体に対するリスクマネジメント機能を信頼してくれているのだと理解しています。

 法務部門がビジネスの推進に積極的に関わることは、非常に重要です。法務部門がビジネスを「止める」役割に徹してしまっては、成長の機会を逃すことになります。

 法務部門の重要な機能の一つはリスクを管理することです。「リスク」というと、特に日本ではマイナスのイメージがありますが、リスクは本来、プラスとマイナスの両方の側面があるはずです。リスクがないところにオポチュニティー(好機)はありません。

 私はよく自分のチームのメンバーに対して、「大事なことは、リスクを適切にコントロールして好機を最大化すること」と話しています。そして、法的知見を活かしてそのリスクの総量を判断し、リスク緩和策を検討することができるのが法務部門だと考えています。