写真:Yamaha outboard ship engine at Thailand International Motor Expo 2023(photo by Ratchapon - stock.adobe.com)

 バイクの製造で広く知られるヤマハ発動機は、これまでにも船外機やゴルフカー、産業用無人ヘリコプター、表面実装機といった新規事業を生み出してきた。現在も、精密農業やモビリティサービスなどの事業を育成中だ。

 なぜ、ヤマハ発動機では次々と新規事業を生み出せるのか。同社新事業開発統括部 統括部長の舟生健太郎氏が、新規事業部門の在り方や、オープンイノベーションを活用した事業創出の取り組みについて語った。

※本稿は、Japan Innovation Review主催の「第5回 新規事業フォーラム」における「特別講演:ヤマハ発動機が生み出す新規事業群―オープンイノベーションを活用した非連続な事業創出―/舟生健太郎氏」(2025年3月に配信)をもとに制作しています。

「新規事業創出」はヤマハ発動機のDNA

 ヤマハ発動機の歴史は、ピアノ・オルガン製造の日本楽器製造(現在のヤマハ)が、オートバイ事業に参入し、1955年にその事業を分離・独立させたことに始まる。

 二輪車事業から始まったヤマハ発動機だが、その後、船外機やゴルフカー、産業用無人ヘリ、表面実装機といった事業を生み出してきた。事業はグローバルに展開しており、海外売上比率が94%と高いことも同社の大きな特徴だ。

 2024年度の売上高は約2.5兆円で、6割強を二輪車や電動アシスト自転車などのランドモビリティ事業が占めるが、マリン事業やアウトドアランドビークル事業、ロボティクス事業、さらに金融サービスなど事業は多岐にわたる。
 
 また、新規事業として、現在も、精密農業やモビリティサービス、屋外自動搬送、メディカルデバイス、森林計測、小型電動車両用バッテリーマネジメント、抗体プロファイリングの7つの事業を育成している。

 舟生氏は、同社で新事業が次々と生まれる背景について次のように語る。「一番大きなポイントは『企業文化』です。新しい感動を生み続けることが企業目的となっており、常に新しいことを考えることが推奨される風土があります。『新規事業創出』というものがヤマハ発動機のDNAになっている、といっても過言ではありません」

 さらに、経営層の強力なコミットがあることも、新たな事業を創出する上でのポイントになっているという。「新規事業は、トップマネジメントが中長期的な視点で投資を続けなければ成立しません。コミットに対して、われわれ新規事業部門もその期待に応えるべく、全力を尽くします。そうした関係性ができているのが強みといえるでしょう」(舟生氏)。