フォーネスライフ代表取締役CEOの江川尚人氏(撮影:酒井俊春)

 NECグループでヘルスケア事業を手掛けるフォーネスライフ。同社は、血中タンパク質測定技術とAI・ビッグデータ解析技術を組み合わせ、一人一人の病気のリスクを早期に予測するサービスの提供を通じて、予防医療におけるヘルスケア革命に挑んでいる。親会社から独立する形で、いかにして新たな事業を育てていこうとしているのか。「両利きの経営」の提唱者チャールズ・オライリー教授の日本における共同研究者・加藤雅則氏が、代表取締役CEOの江川尚人氏に聞いた。

ICTの力でタンパク質をバイオセンサーに

加藤雅則氏(以下、敬称略) フォーネスライフは、NECの100%子会社であるNECソリューションイノベータから事業を切り出す形で創業しました。NEC本体から見ると孫会社の位置付けになりますね。どのような事業を行っているのでしょうか。

江川尚人氏(以下、敬称略) 私たちは「予防医療におけるヘルスケア革命」をミッションに掲げ、早期発見よりももっと早く疾病リスクを予測するサービス「フォーネスビジュアス」を提供しています。

 その技術的基盤となっているのが、アメリカのソマロジック(SomaLogic、2024年1月にスタンダードバイオツールズと経営統合)が開発した血中タンパク質測定技術です。生涯変わらない遺伝情報とは違い、タンパク質は生活習慣などによってバランスが大きく変化するという特徴があります。つまり、タンパク質を継続的に測ることにより、最新の体の状態を把握することができるのです。

 ソマロジックの血中タンパク質測定技術では、少量の血液(約5mLの採血)から一度に7000種以上もの1タンパク質を高精度に測定できます。この膨大なタンパク質データを、NECグループが持つビッグデータ解析技術と先端ICT(情報通信技術)を活用して分析することで、将来の疾病リスクや現在の体の状態を可視化することが可能になりました。

 検査結果を踏まえて、保健師との健康相談、生活習慣改善メニューを提案するサービスも併せて提供しています。グローバルで見ても、このような将来の疾病リスク予測と生活習慣改善に向けたサービスを組み合わせて提供しているのは、他に見当たりません。

加藤 どのような経緯で、NECグループからこのような革新的なヘルスケア事業が生まれたのでしょうか。