ビジネス書の名著・古典は多数存在するが、あなたは何冊読んだことがあるだろうか。本連載では、ビジネス書の目利きである荒木博行氏が、名著の「ツボ」を毎回イラストを交え紹介する。

 連載第5回は、マサチューセッツ工科大学(MIT)上級講師が、学習と創造のプロセスを解き明かし、世界のビジネスリーダーに支持される名著『U理論』(英治出版)を取り上げる。

本稿は「Japan Innovation Review」が過去に掲載した人気記事の再配信です。(初出:2024年1月24日)※内容は掲載当時のもの
U理論[第二版]――過去や偏見にとらわれず、本当に必要な「変化」を生み出す技術 』(C・オットー・シャーマー著、中土井僚・由佐美加子訳、英治出版)

 最近、多くの組織において、マネジメント層の「対話力の欠如」が深刻な問題として認識されるようになった。

 今までは、マネジメント層のコミュニケーション課題といえば、プレゼンテーション力に代表される「伝える力」にあった。だから、コミュニケーション力強化の名目で、数多くのプレゼンテーション研修が実施されてきた。

 しかし、時代は変わったのだ。

 コミュニケーションが上から下へ、という単一のベクトルだけでは機能しなくなってきた。上から下だけでなく、下から上へ、もしくは横から横へ、斜め上から斜め下へ・・・といった多様なベクトルが必要になってきたのだ。

 その背景は、言うまでもない。コロナ禍を代表例として、私たちのビジネスにおける多くの前提が変化したからだ。

 もはやトップだけが考えてそれを下に伝えるだけのマネジメントモデルでは機能しなくなってきている。現場からの示唆をボトムアップで吸い取り、その知が循環していくような仕組みを作らなくては立ち行かない。

 そんな時代において、機能不全となっているポイントがある。それこそが、マネジメント層の「対話力」だ。