シーズン前のアクシデント

2023年12月21日、全日本選手権、男子シングルSP演技後の大島光翔 写真=森田直樹/アフロスポーツ

 2023-2024シーズンも変化した思いに裏打ちされていた。

「コンセプトとしては、ショートはキャッチーで楽しい、誰が見ても分かる明るいプログラム、フリーはショートとのギャップを自分なりにつけたくて、あえて王道にチャレンジしてみました」

 ショートプログラムでは『スーパーマリオブラザーズ』をコミカルに演じ、衣装の工夫もあいまって反響を呼んだ。

 フリーは世界有数の振付師シェイリーン・ボーンに初めて依頼した。

「スケートをやっている身としては憧れの振付師さんでした。運動量やプログラムの密度という部分では今までにないぐらい濃いプログラムになったと思います。彼女自身が目の前でお手本を見せてくれるんですけど、曲がかかっていないときでも音楽が聴こえてくるような表現のすごさや可能性を感じました」

 満を持したシーズンだったが、開幕にあたって、アクシデントもあった。

 昨夏、中野園子コーチのチームの合宿に参加した。

「小学1、2年生の頃から毎年お世話になっていて、ずっとみていただいています」

 その合宿の練習中にジャンプで転倒、脳震盪を起こした。

「4回転の練習中でした」

 気づいたときには病院にいたという。2週間ほど静にするよう医者に言われた。

「どうしても潜在的な恐怖心というのはあって、踏み切る直前だったり、ふとしたときに恐怖心が出てくることはまだあります」

 シーズンを通し、考えていた計画なりに対して影響はあっただろう。

 それでも昨年末の全日本選手権では久しぶりに4回転ルッツに挑んだ。成功しなかったが、果敢に挑んだ。

「競技である以上ジャンプが絶対的に必要になってくる要素の1つですし、ジャンプもプログラムの一部と捉えています」

 ショートプログラムでジャンプのミスが出て20位スタート、総合22位に終わったが「ショートでほんとうに情けない結果だった分、切り替えるしかなかったので割り切ってフリーを滑ることはできたんじゃないかと思います」

 シーズンは終わり、通学している明治大学の4年生となった。これからについて大島は言う。

「自分の中でまだ決心はついていないんですけど」

 スケート人生をどう進んでいくのか……考えつつも、判断するための「きっかけ」となる出来事もあった。