ソニーグループは2012年、グループの多様な事業で活躍するメカ設計の技術者が事業の垣根を越えて交流する「メカ戦略コミッティ」を立ち上げた。その後、光学やソフトウェアなど、10の技術領域で同様の組織横断のコミッティが立ち上げられた。現在これらの活動は「技術戦略コミッティ」として、ソニーの技術力を支える基盤となっている。前編記事ではメカ戦略コミッティの立ち上げの経緯と活動内容について触れたが、後編の本記事では、同コミッティが今まで挙げてきた成果について、運営を担うソニー インキュベーションセンター XR技術開発部門 部門長,Distinguished Engineerの天辰誠也氏に聞いていく。
■【前編】ソニーのグループ横断活動、異分野技術者の交流が生み出す大きな「実利」とは
■【後編】CAD統一にも成功 、新しい価値を生み出したソニー“横串活動”の綿密な作戦(本稿)
オリジナルブレンドマテリアルをはじめとする新たな価値の開発
——「メカ戦略コミッティ」では、これまでにどのような成果を残してきたのでしょうか。
天辰誠也氏(以下敬称略) メカ戦略コミッティには現在、3つの部会があり、それぞれが活動しています。3つの部会とは、技術開発部会、人材育成部会、設計環境部会です。
まず技術開発部会ですが、ここでは50近い技術テーマで開発を行い、成果も出ています。代表的なのは「開発の効率化」です。実際に、部門間で共通の開発を行うことによる費用削減などを実現できました。
その一例が、樹脂と金属を接合する「2色成型」技術開発です。この技術は、以前はスマートフォンの防水機能を保証するために使用されていましたが、それを他の製品でも使えるように開発をしました。様々な商品のメカ設計に精通する技術者の意見を取り入れることで、開発工数が大幅に削減され、かつ高い品質を短期間で実現することができました。
開発の効率化だけでなく、今までにない価値を生みだした事例もあります。例えば、カメラのグリップ部分は「革シボ」と呼ばれる革を模した質感が表現されているのですが、メカ設計者が金型製造技術部門と直接交流を持ち、新しい加工プロセスの開発に取り組みました。これにより、従来より溝が深く握りやすい、見た目も革に近いグリップを実現することができ、カメラを構えたときのグリップ性や安定感にもつながっています。この技術はウォークマンなど他の商品に展開されています。
また、脱プラスチックにも貢献する、環境に配慮したソニーの紙素材「オリジナルブレンドマテリアル」の開発においても、コミッティ内での議論が生かされました。現在、スマートフォンやオーディオなど、多くの商品パッケージに採用されています。メカ設計だけでなく、クリエイティブセンターのデザイナーや研究開発に携わるメンバーが参加しているメカ戦略コミッティだからこそ、実現できた価値だと考えています。