映画祭のフォトコールで監督とお揃いの白T×無地スーツ
2023年5月26日、第76回カンヌ国際映画祭にて。コンペティション部門作品『PERFECT DAYS』のフォトコールでヴィム・ヴェンダース監督と笑顔を振りまいた。本作にて、役所広司はカンヌ国際映画祭最優秀男優賞に輝いた。
「ネイビースーツのお手本のようなカジュアルコーデですね。ネイビーのアンコンスーツ、白Tシャツ、白スニーカーと定番の合わせ方ですが(一歩間違うと、着せられている印象になりかねません……)、スーツがダブルブレスト、パンツがリラックスフィットと存在感があるのでシンプルなコーディネートでも余裕のある品格が生まれています。
胸ポケットにアイウェアを入れるテクニックも効いています。シンプルですが、清潔感があり、リラックスした雰囲気で“爽”印象。ヴィム・ヴェンダース監督と白Tシャツがリンクしたコーディネートもナイス。ふたりで口裏を合わせて揃えてきた可能性も!?」
芸歴45年にして世界が認める名優。役所広司は日本の映画界を牽引するかのように、その先頭を走ってきた。出演した映画は、ゆうに80本を超える。その多くで主演を務めているのだから、いかに監督からその演技力を求められているのが分かる。
2023年は1月に『ファミリア』、5月に『銀河鉄道の父』と、主演映画が公開。12月には『PERFECT DAYS』が公開され、カンヌ国際映画祭最優秀男優賞を受賞した。かたやテレビドラマ『VIVANT』にも出演し話題をさらった。CM出演も引きも切らない。68歳にして“全盛期”とでも言いたくなるほどの八面六臂の活躍ぶりだ。
ただ、ご存知だろうか。長崎県立大村工業高校を卒業後に上京し、東京都千代田区役所の土木工事課に勤務し、4年ほど務めていたことを。最初から役者道ではなかったのだ。仲代達矢主演の舞台『どん底』を観劇したことをきっかけに役者を志し、1978年に200倍という倍率の中、俳優養成所「無名塾」に入塾。同年初舞台を踏み、1980年には連続テレビ小説『なっちゃんの写真館』でテレビドラマデビューを果たした。1996年公開の大ヒット映画『Shall We ダンス?』に出演。以降数多くのヒット作に出演し、様々な映画賞で主演男優賞を総なめにしている。
最近のインタビューではこう語った。「年を取ることを無駄にはできません。年齢を重ねたことで出る顔や首のシワも武器になる。だから頑張りますよ。ギリギリまでね」。顔や体から滲み出る経験の豊富さと品格。富と名声を得ても、飄々とした気どりのなさは変わらない。70歳、80歳を超えても名演に期待できそうだ。
四方章敬(しかたあきひろ)
1982年京都府生まれ。スタイリスト武内雅英氏に師事し、2010年に独立。ドレスファッションに精通し、「LEON」「MEN’S EX」「MEN’S CLUB」など、多くのメンズファッション誌からオファーを受ける敏腕スタイリスト。業界きってのスーツ好きとしても知られ、イタリア・ナポリまでビスポークに赴いた経験もある。最近はセレクトショップやブランドと共同でウェアのプロデュースを手掛けるなど、活躍の幅を広げている。