独自の審美眼を貫く、世界のレジェンドたち。政治家から作家、思想家、建築家、ビジネスエリートまで、彼らが身に着ける品々から、その生き様も見えてくる。いかに洋服を楽しみ、相手への印象を考えて装っているのか、ドレスファッションに精通するスタイリスト四方章敬氏が解説。今回取り上げるのは日本が世界に誇る俳優、役所広司。カメレオンのように変幻自在、憑依したかのような確かな演技力でその評価を不動のものにしている名優が、“役”の装いを脱ぐとき、オフィシャルなシーンや晴れの舞台でどのような着こなしを見せるのか。早速確かめていきたい。
写真=アフロ 協力=四方章敬 編集・文=名知正登
タイアップイベントで企業カラーの“赤”をベルトで取り入れる遊び心
2017年5月10日、東京で毎年恒例のドリームジャンボ宝くじの記者発表会に出席。過去に当たり券の販売で定評のある数寄屋橋の西銀座発売所には、宝くじを購入しようと早朝から約200人が列を作った。
「ナローラペルのブラックスーツ、小襟の白シャツ、黒白の柄タイといったモード的なスタイルですね。ただスーツのシルエットは細すぎず、チーフも入れるなど、基本はしっかり押さえている印象です。ストレートチップのシューズもモードらしい強さを緩和させている要因です。黒がメインだからといってモード全開でなく、ほんのりモードっぽさを漂わせることは大人の男性に合っていると思います。
パンツの裾の丈感、チーフの入れ方なども細かいところですが、ピシッと洗練されています。そして、ポイントはベルトのバックルの赤! オケージョンに合わせ、宝くじのイメージカラーをさりげなく取り入れるユニークさに脱帽です」。