独自の審美眼を貫く、世界のレジェンドたち。政治家から作家、思想家、建築家、ビジネスエリートまで、彼らが身に着ける品々から、その生き様も見えてくる。いかに洋服を楽しみ、相手への印象を考えて装っているのか、ドレスファッションに精通するスタイリスト四方章敬氏が解説。今回は“北欧の至宝”と言われる俳優マッツ・ミケルセン。主演と脇役、悪人と善人。対極にあるものを軽やかに行き来する。どんな役を演じても、見る者を惹きつけてやまない国際派俳優の「ONとOFF」のスタイルは?

写真=アフロ 協力=四方章敬 編集・文=名知正登

ぴったり吸いつくようなスーツに身を包み、凛々しさを見せる

写真=AP/アフロ

 2022年6月に行われた、2023春夏のミラノコレクションにて。ジョルジオ アルマーニのショーにピークトラペルのジャケットを纏ったエレガントなスタイルで現れた。

「ダンサー出身なだけあって体格が良く、スーツが本当に似合いますね。僕も体を鍛えようかな(笑)。おそらくジョルジオ アルマーニのジャケットだと思いますが、肩への吸いつき具合を見ても仕立ての良さが一目瞭然。メランジ調の素材感もいいですね。ラペルの形がドレッシーでもいわゆるビジネス感がなく、サングラスをかけても不自然さはありません。シャツ、タイの色味もスーツと合っていて全体的にまとまりがあります。強いて残念なところを挙げるのであれば、タイとチーフの柄が同じでないほうがよかったかも。素材感のあるスーツなので無地のネイビーチーフで落ち着かせたいところ」。