独自の審美眼を貫く、世界のレジェンドたち。政治家から作家、思想家、建築家、ビジネスエリートまで、彼らが身に着ける品々から、その生き様も見えてくる。いかに洋服を楽しみ、相手への印象を考えて装っているのか、ドレスファッションに精通するスタイリスト四方章敬氏が解説。今回は宇宙ビジネス「スペースX」や電気自動車「テスラ」で知られ、米経済誌『フォーブス』による世界長者番付ランキングで1位になったこともあるイーロン・マスク氏に注目。失言の多さが取りざたされているが、服装での“失礼”はあるのか?

写真=アフロ 協力=四方章敬 編集・文/名知正登

「無駄を省いて本質を見極めた」シンプルなスーチング

写真=ロイター/アフロ

「奇をてらっていないシンプルなスーチングですが、ノッチトラペルでなくピークトラペルのジャケットを選んでいるのにセンスを感じます。ちょっとドレッシーで、胸まわりを華やかにしてくれる効果も。肩のなだらかな傾斜、ややふっくらとしたラペルなどを見る感じ、きっと高級なスーツを着ているのだろうなと察します。

 チーフを入れないのもモード感がプラスされていいですが、『無駄を省いて本質を見極めろ』と言うイーロン氏の思想が表れているようにも思います。ネクタイにディンプルを入れていないのも、スーツはこう着るというルールにとらわれていない証左かも」。