リラックスした“完全オフ”でも、ブルーとホワイトは忘れない

写真:AP/アフロ

 今年の7月、欧州を歴訪する直前にはデラウェア州の沿岸都市リホボスにある自宅近くのビーチで休暇を楽しんだ。アンダーアーマーのベースボールキャップをかぶり、ポロ ラルフ ローレンのポロシャツ、カメ柄のハーフパンツにランニングシューズ、サングラス姿というバイデン氏が目撃された。

「ショーツにポロシャツといったシンプルなコーディネートですが、これもまた色味を青と白で合わせているのでまとまり感があります。腕時計、キャップの小物までブルーで統一し、それがアクセントとして効いています。他に注目するところはポロシャツですね。ラルフ ローレンの定番のポロシャツですが、洗いざらしで着用しているところや、襟のニュアンスの出し方が完璧! ポロシャツはこれくらいラフに着こなす方がいいです。バイデン大統領は普段スーツとかジャケットのイメージが強いのに、こんなショーツスタイルも様になるのは流石ですね」


 2020年のアメリカ大統領選で勝利し、第46代大統領に就任したジョー・バイデン氏。幼少時代は吃音に苦しみ、上院議員初当選の直後に交通事故で妻子を亡くした過去があることをご存知だろうか。弁護士資格を持ち、29歳の若さでデラウェア州の上院議員に選出。オバマ政権時代には副大統領を8年間務めていたという華々しいキャリアを持ちながらも、常にプライベートな部分で苦労してきた人物なのだ。そのぶん人の痛みが分かるとアメリカ国民から支持を得ている。

 そんなバイデン大統領の服装に目を向けてみよう。装いの中心に添えているキーカラーは青。ブルーは洗練を感じさせる色で民主党のイメージカラーでもあり、好感度も高い。前大統領トランプ氏が使っていた赤に対して、あえてそうした印象を国民に植えつけようと画策したのかもしれない。

 80歳とは思えないスラリとした体型で、ネイビースーツ、白シャツ、ブルータイを締める着こなしは清潔感や誠実さが漂い、トランプ氏とは対極の印象を演出している。バイデン大統領が愛好するラルフ ローレンのスーツやジャケットも「何の変哲もない」と言えるほどのコンサバティブなデザインを基本にしていて、仕立ての良さがうかがえる。服選びにおいてもアメリカの歴史を大切にする姿勢はずっと変わらない。

 

四方章敬(しかたあきひろ)
1982年京都府生まれ。スタイリスト武内雅英氏に師事し、2010年に独立。ドレスファッションに精通し、「LEON」「MEN’S EX」「MEN’S CLUB」など、多くのメンズファッション誌からオファーを受ける敏腕スタイリスト。業界きってのスーツ好きとしても知られ、イタリア・ナポリまでビスポークに赴いた経験もある。最近はセレクトショップやブランドと共同でウェアのプロデュースを手掛けるなど、活躍の幅を広げている。