10⽉27⽇(⾦)から2024年3⽉17⽇(⽇)まで、青森県弘前市「弘前れんが倉庫美術館」で大規模個展『松⼭智⼀展:雪⽉花のとき(MATSUYAMA Tomokazu: Fictional Landscape)』を開催する松山智一さんをインタビュー。青森で展覧会をやる理由から、美術館、アート市場の問題、日本の課題、日本人アーティストの在り方まで、たっぷり語ってもらいました。

Photo: Akira Yamada
松⼭智⼀(MATSUYAMA Tomokazu)
1976年岐⾩県⽣まれ、ブルックリン在住。絵画を中⼼に、 彫刻やインスタレーションを発表。アジアとヨーロッパ、 古代と現代、具象と抽象といった両極の要素を有機的に結 びつけて再構築し、異⽂化間での⾃⾝の経験や情報化の中 で移ろう現代社会の姿を反映した作品を制作する。バワリーミューラルでの壁画制作(ニューヨーク/⽶国、2019 年)や、《花尾》(新宿東⼝駅前広場、東京、2020年)、 《Wheels of Fortune》(「神宮の社芸術祝祭」明治神 宮、東京、2020年)など、⼤規模なパブリックアートプロ ジェクトも⼿がけている。近年の主な個展に、 「Accountable Nature」⿓美術館(上海/中国、2020年 |重慶/中国、2021年)などがある。

世界的アーティストがなぜ青森で展覧会をすることになったのか?

「せっかくですから、近くで話しませんか?」

かなり広い会議室でお話を聞くことになった松⼭智⼀さんは、いきなりそんな提案をしてきた。

ニューヨーク・ブルックリンを拠点に活動している日本人アーティスト。10⽉27⽇(⾦)から、来年、2024年の3⽉17⽇(⽇)という長期にわたって、青森県弘前市の「弘前れんが倉庫美術館」で開催される日本では初めての大規模個展『松⼭智⼀展:雪⽉花のとき(MATSUYAMA Tomokazu: Fictional Landscape)』の準備のために来日した。

アメリカだけでなくヨーロッパの名門ギャラリーでも作品を発表し「アート・バーゼル」や「フリーズ」といったコンテンポラリーアートの祭典にも参加する、引っ張りだこの有名アーティストだ。それで恐縮しながらも、今回も青森まで行ったんですか? と問いかけながら、松山さんから2席開けた3つ隣という、中途半端に遠慮した席に腰掛けた。

「前回すでに弘前までいっているので、今回はむしろ、関係者たちと東京で会っている感じです。良い展覧会にするためには、関わってくださっているみなさんとのコミュニケーションがとても大事なんです」

会場となる「弘前れんが倉庫美術館」では、1,200㎡を超える総展⽰⾯積に、2016年から現在までの絵画、彫刻など計30作品を展示する。うち10作品は世界初公開、⽇本初公開でいうと21作品が新作になる。

「6部屋をストーリーに分けて使う予定です。日本を離れて20年、脈々と作ってきた、僕の世界の見方、今の、これからの文化のあり方、アイデンティティのありかたを見せられる、やりがいある仕事になると思っています」

©Naoya Hatakeyama
弘前れんが倉庫美術館

そもそも弘前での展覧会になったのは、場所が広いからなんですか?

「青森はAOMORI GOKANといって、興味深いコンテンポラリーアートがパーマネントで見られる美術館が5つもあって、直島に次いで世界的に注目されている場所なんです。非常に興味を持っていたところ、弘前れんが倉庫美術館の館長から、お声がけいただきました。れんが倉庫美術館はシードル工場だったところを田根剛さんがそれを活かしながら美術館にしたので、既存の美術館のイメージとは離れたコールタールの黒い壁など元々の建物を活かした設計となっていて、非常に珍しく個性のある空間になっています。それであれば、この空間を最大限に利用し、鑑賞者と体験を通して対話をはかれるような展示にしたいと考えています」

さらに美術館のまわりには商店街があり、スナックがあり、というコントラストも最高だ、という。

「津軽も近く、日本の文化を色濃く感じられる場所だと感じています。文化があるところには必ず人が集まる。僕は長くアメリカで活動しているからこそ日本の文化によりコントラストを感じるし、より惹かれるというのもあり、お声がけをいただいた時には文化背景が大きく異なるところでの展覧会にポテンシャルを感じました」

と、東京のようなグローバルな都市ではないことの意義を語る。