マネーくさい?日本とアートの距離感

日本はこの数年で、アートフェアが増えていますし、美術館も多くあります。アートワールドでの日本の状況というのはどういうものだとおもいますか?

「アートワールドでは比較的アジアは若いので、韓国、中国、香港、日本のアートに対する距離感っていうか、アートがどういう存在であるか、というのがそれぞれに異なるというのは非常に感じるんですね。どういう考えでみなさんがアートを購入・所有されるかという概念を構築できるかだと思うんです。すべての国においてエデュケーションは必要だと思います。ただし、中国も日本も韓国もなんですけれど、元来、古い美術品に関しての距離感という意味での教養の高さは、世界でトップクラスだと思っています」

ところが、こと、現代のアート、コンテンポラリーアートの話になると妙にお金の話が濃くなってきませんか?

「マネタイズっていう香りがどの距離感であるかっていうのが、これから大きな一つの課題になるんじゃないかなとは感じています。なので、闇雲に作品が流通する、証券性が高いっていうところは、表現している我々からすると、それはアートのたったひとつの側面であって、むしろ中核ではないということはちゃんと伝えたいです」

《Wheels of Fortune》© Tomokazu Matsuyama
2020年 個⼈蔵 スチール
257×400×105cm

「アートを所有するっていう言葉がそもそもマネタイズっぽいんですが、アートと一緒に生きるっていう概念がそもそもどこにあるのか、伝えないといけないかなと思います。いっとき、日本でアートは投資だっていうのばっかりが独り歩きしてしまったじゃないですか。これ日本に限ったことではないと感じていますが。欧米圏の作品をコレクションするっていうのと少し異なるかなという感じはときにしますかね」

どう異なるんでしょう?

「自分自身のアイデンティティっていうものを、学ぶ動機を与えられるのがアートで、結果、より成熟した人格形成になりうるのが芸術です。アーティストや作品がそうしたきっかけを提唱できるっていう意味でのパラダイム・シフトができるかっていうのが、大きなポイントになると思うんです。そういうことを伝えないといけないのは我々なんですよ」

《Hello Open Arms》© Tomokazu Matsuyama
2023年 個⼈蔵 アクリル絵具・ミクストメディア、カンヴァス
257×216cm

「欧米圏の場合は、審美眼を養い、購入した作品を自身や家族のステートメントにもします。その作品は代々引き継がれることもあり、結果として資産価値のあるものとなっていくということはあります。ただ引き継ぐのは資産だけではなく、教養であり嗜みでありそれが文化となっていく」