日本人の文化度
日本は、アートの教育においても、現代のものと過去のものとの間に、ちょっと断絶があるんじゃないでしょうか?
「日本の場合、コンテンポラリーアートがあまり文脈的に理解されていないようにも思いますね」
ピカソくらいまでは学校で習うんですけどね……
「印象派以降、前衛表現が生まれたことで、戦後アメリカで抽象表現主義が芽吹き、概念や言論を重んじるミニマリズムに展開されながら、反骨精神と高度成長期に社会批判を含むポップアートに流れていった。そして今の現代美術作家の作品へとつながっていくというような流れは殆ど認知されていないですよね。ホントはつながっている点と点がつながっていない。作っているアーティストたちのほうも、ここを見ていないことがあるっていうところが、ひとつのこれからの課題なんじゃないかなとは感じますね」
松山さんが注目された理由にはニューヨークのコミュニティの盛り上がりが注目された、というところがあるとおもいますが、やっぱりそういうなかでも自分は日本人だ、マイノリティだ、と感じますか?
「作品の中でコンセプトを具現化し表現することができるようになってきましたが、やはり欧米の中で日本人がマイノリティであるということは変わらない事実ですよね。その環境の中で抜きんでる為には、スタンスを明確にすることも重要です」
つまり、いわゆる白人と同じことをやっていてもダメ?
「いまでも黄色人種で、アメリカのアートワールドで、表現を続けるっていうのは楽じゃないんですね。白人に比べると倍くらいの成果をださないと、白人と対等の歩幅で歩いていけない。ニューヨークで20年以上表現を続けるうえで、様々なハードルが出現してきましたが、一時的にもてはやされることと、社会に受け入れられることは本質が大きく異なります。そのリアリティと向き合って表現をし続けるうちに、自分のアイデンティティと向き合いながら続けていくことにしか答えはないと、それだけだと思います」
スパッと表現するのは難しいことかとおもいますが、日本的なものってなんなんでしょう?
「我々日本人ってやっぱり、文化度は非常に高いと思っています。アメリカの多種多様な価値観のある街で暮らしていると特に感じますね。例えるなら日本の中で文化が豊かな京都の人が、他の街を少し上から見るような感じに近いかもしれないですね」
あはは
「僕、妻が京都人なので、言っていいとおもってます」
僕はフランスに住んでいましたが、それ、分かる気がします。
「フランスのように歴史のある国でもそうですね。成熟した文化がある、でも全く異なる文化背景の人に理解してもらうには翻訳や解釈が必要になる。価値や思考、感性はそれぞれの人種や国の歴史に色濃く結び付いています。僕は日本人としてのアイデンティティも持っていますが、その感性を認知してもらう為の表現方法を模索することが大切だと感じています」
おお!
「それで、コンタクトポイントをつくりたいと思うようになり、ボーダーラインがどうやったらあいまいにできるか、様々な価値基準を持っている人のエントリーポイントをどうすれば作れるのか? というのが僕のクリエイティビティの一番のモチベーションになっていると思います」
MATSUYAMA Tomokazu: Fictional Landscape
会 期:2023年10⽉27⽇(⾦)〜2024年3⽉17⽇(⽇)
会 場:弘前れんが倉庫美術館(⻘森県弘前市吉野町2-1)
開館時間:9:00-17:00(⼊館は閉館の30分前まで)
休館⽇:⽕曜⽇、年末年始(2023年12⽉25⽇(⽉)〜2024年1⽉1⽇(⽉))
※ただし、2024年1⽉2⽇(⽕)、1⽉3⽇(⽔)は開館
観覧料(税込):⼀般 1300円(1200円) ⼤学⽣・専⾨学校⽣ 1000円(900円)
※( )内は20名様以上の団体料⾦
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