昨今、DXに取り組む日本企業が増えているものの、成功を収めたといえる事例は極めて少ない。その原因として、「日本人の国民性」への理解不足を挙げる人物がいる。『日本流DXー「人」と「ノウハウ」 究極のアナログをデジタルにするDX進化論』の著者であり、かつてドワンゴ、KADOKAWAグループのDXの牽引役を担ってきた各務茂雄氏だ。同氏に、DXを成功に導くためのポイントについて聞いた。
日本企業が目指すべき「日本らしいDXのあり方」
――今回、なぜ「日本流DX」をテーマに著書を出されたのか、その背景を教えてください。
各務茂雄氏(以下敬称略) 私は20年以上、外資系IT企業で働きながら、様々な日本企業のITチームの方と仕事をしてきました。そこでは、IT化で「成功を収める企業」と「成功に至らない企業」を目にしてきたものの、成否を分ける要因まではわかりませんでした。
何が成功につながり、何が失敗を招くのか。その一つの答えにたどりついたのは、ドワンゴに入社してITインフラ改革の牽引役を担っていたときでした。
結果として、ドワンゴのITインフラ改革は予想以上の成功を収めました。しかし、その後に取り組んだグループ全体のDXを進める過程では、あらゆる場面で(悪い意味での)「日本企業らしさ」を目の当たりにすると同時に、それらが原因でIT活用が進まないのだと痛感しました。「なるほど、だから自分が過去にベンダーの立場として日本企業に『こういう風に変えていきましょう』と提案しても何も変わらなかったのか」と腑に落ちたのです。
一方、ドワンゴやKADOKAWAといったメディア・エンターテインメント企業で仕事をする中で、日本企業が持つアナログ的な価値、クリエイティビティの強みを感じたことも事実です。
日本企業の価値を残し、生かすためにどうすべきか。その一つの解である「日本らしいDXのあり方」を多くの人へお伝えするために、本書を執筆しました。